2007 Fiscal Year Annual Research Report
訪花昆虫における他個体の情報的利用のメカニズムとその適応的意義の解明
Project/Area Number |
07J02276
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 利奈 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マルハナバチ / 情報利用 / 訪花昆虫 / 採餌 / 行動生態学 |
Research Abstract |
私は先行研究で、マルハナバチが見慣れた花を訪れるときには競争者となる同種他個体を避けて採餌するが、見慣れない花に出会ったときには逆に他個体のいる花序を訪れる傾向を示すことを明らかにした。このような他個体を情報として利用した採餌は、分布や質の変動のはげしい花資源を利用している訪花昆虫が効率的に新しい花種を見つけていくうえで有利な戦略と考えられる。しかし、彼らが餌場で出会う個体は同種だけとは限らず、他個体の情報的な価値はその個体が自分と「似た者同士」かどうかによって変化するかもしれない。ではマルハナバチは、見知らぬ花種で採餌している他個体が自分と同種であるか否かを見分け、それによって相手への反応を変化させることができるだろうか。この疑問を検証するため、ツリフネソウを訪花中のトラマルハナバチを対象に野外実験を行った。ハチにとっての見知らぬ花(リンドウ)の2つの花序の一方に、同種(トラマルハナバチ)あるいは他種(クロマルハナバチ)の個体を添え、採餌中の個体にいずれか1つの花序をえらばせた。するとハチは、リンドウに同種の個体がいるときには2つの花序をほぼ等しい頻度で訪れたが、リンドウに他種がいるときや、現在訪花中のツリフネソウの花序に同種がいるときには他個体のいない花序を好んで訪れる傾向を示した。マルハナバチは種ごとに口吻の長さが異なり、それぞれにつり合う長さの花筒を持つ花種を好む(トラマルハナバチは長舌種、クロマルハナバチは短舌種)。本実験の結果から、マルハナバチが見知らぬ花を訪れる際、自分とは花種の好みが異なる他種より好みの似た同種の存在を餌を見つけるための手がかりとして利用することにより、自分の口吻長とつり合う長さの花により確実に到達できる可能性が高まった。ハチが他個体の情報的価値(共通の花種を利用するか)にもとづいて反応を変えるのかどうか、今後くわしく検証していく必要がある。
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