2008 Fiscal Year Annual Research Report
絵を描く心の進化的な起源に関する比較認知心理学的研究
Project/Area Number |
07J02421
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
齋藤 亜矢 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 東京藝術大学美術学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 描画行動 / 発達 / 比較認知 / 表象 / チンパンジー / 幼児 |
Research Abstract |
描くことの認知的な基盤およびその進化的な起源について明らかにするため、チンパンジーとヒト幼児を対象に比較認知心理学的な研究を進めている。描画行動は再認課題と異なり定量的な解析が難しいが、共通の課題場面を設定することにより、描画行動を反応として直接比較することができる。昨年度までに描画模倣課題、描画補完課題をおこない、チンパンジーが表象を描かないことの要因として、ペンを持つ動きの制御という技術的な問題ではなく、「ない」ものを補うという認知的な問題のかかわりが示唆された。当該年度は、それらの成果について著書、学会等で発表するとともに、自由描画、および模倣課題について、ヒト幼児を対象に継続して定期的な実験観察をおこない、縦断的なデータを集めた。模倣課題では、横線、縦線、円、十字、正方形、ひし形、三角形等を提示しているが、模倣する形によって難易度が異なる。形ごとの最初の成功年齢と成功に至るまでの失敗パターンについてデータを整理し、同時におこなっている自由描画、とくに表象を描き出す時期との関連について分析を進めている。また現存する人類最古(旧石器時代末期)の絵のひとつ、オーストラリアで約2万年前に描かれた岩壁画を調査、資料を収集した。オーストラリアでは人類の初期の絵が残されているだけでなく、ごく最近までアボリジニの人々により岩壁などへの描画が続けられてきた。文字のない文化では、描画が知識や物語を伝えていく手段としての大きな役割を持っている。今後は、描くことの認知的な基盤についてさらに掘り下げるため、チンパンジーとヒト幼児で、ひきつづき比較実験をおこなうとともに、ヒトの描画行動におけるコミュニケーションの役割や影響に着目して研究を進めたい。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article]2008
Author(s)
齋藤亜矢, 分担執筆
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Journal Title
絵筆をもったチンパンジー描くことの起源を探る小泉英明編『脳科学と芸術』(工作舎)
Pages: 033-052
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