Research Abstract |
蛇紋岩は,上部マントルを構成するかんらん岩が水を含んで変質した岩石であることから,沈み込み帯のマントルウェッジにおける対流や物質循環を理解する上で重要な鍵を握ると考えられている(Hyndman & Peacock,2003).また,かんらん岩と比べて強度が小さいことから,マントルウェジにおける蛇紋岩の存在は,スロー地震,低周波微小地震などの沈み込みプレート境界のすべり挙動との深い関わりが指摘されている(Seno,2005;Shelly, et. al.,2006).申請者は,沈み込みプレート境界における蛇紋岩の存在形態やそのすべり挙動に対する物質科学的な制約を与える目的で,カリフォルニア(ゴルダ地域)において地質学的な研究を行った. その結果,世界で初めて,沈み込みプレート境界浅部における蛇紋岩の存在形態とその具体的な変形過程が明らかとなった(Hirauchi & Yamaguchi,2007).また,沈み込み帯浅部の非地震性領域におけるすべり挙動に対し,物質科学的な制約を与えた. Hirauchi, et. al.(in press)は,蛇紋岩中に残された初生鉱物を用いて岩石学的・地球化学的研究を行い,ゴルダ地域の蛇紋岩体が低速拡大軸をもつ海嶺付近の海洋断裂帯を起源とすることを明らかにした.この研究により,もしゴルダ地域の蛇紋岩体に対して変成岩岩石学的な研究手法を導入すれば,海洋底で蛇紋岩が形成されてから,プレート境界域で沈み込み,上昇する際の温度圧力経路を推定できる可能性がある.
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