2007 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本における田制の構造と財政運用の実態に関する研究
Project/Area Number |
07J02453
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小倉 真紀子 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 日本史 |
Research Abstract |
古代日本の律令に規定された稲作地「田」は、大きく私田(個々の人民に支給)と公田(官人・官司に支給)に区分された。田制に関する従来の研究では、全田土の国有化と班田収授を律令制施行の根幹と捉える視点から、口分田を含む私田について専ら重点的に議論されてきたが、田制の本質を理解するためには、国家財政の基盤として機能した公田についても見落とすことはできない。このような問題意識から、今年度は、先行研究の成果が希薄である公田)経営方法を解明することを目指した。 公田経営の基本法である田令公田条(養老令)には、(1)諸国の公田は地方官である国司が「郷土估価」に従って賃租(1年限りの賃貸借)すること、(2)その賃貸借料は中央官司である太政官に送り雑用に充てること、が規定されている。このうち(1)に見られる「郷土信価」という文言について、学界の通説では、田地(不動産)の賃貸借料の算定に物品(動産)の売買価格は関係しないという先入観から、「郷土估価」の「估価」を市で売買する物品の時価と説明した『令集解』(平安時代に成立した養老令の注釈書)の記述を不適切な解釈として退け、「『郷土信価』とは地方の慣行に任せた土地の賃貸借料を指す」と理解してきた。しかしながら、公田の賃貸借料(地子)は地域に関わりなく法令で全国一律に稲の量によって定められると共に、各国は地子を規定量の稲と等価の代替物によって太政官に納入するよう決められていた、という諸史料から復元される公田の経営システムと照らし合わせると、田地の賃貸借料の納入に物品の価格が密接に関係していたことがわかり、『令集解』の注釈は矛盾なく理解し得ること、「郷土佑価」は公田の地子稲とその代替物との国別換算価格を指すものであることが明らかになった。これらの成果は、第35回古代史サマーセミナーにおいて「賃租における『郷土佑価』と地子交易」と題して口頭発表した。
|
Research Products
(1 results)