2007 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア正教をめぐる記憶から見る、ポスト・ソヴィエト社会の国民統合問題
Project/Area Number |
07J02518
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 沙奈美 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ロシア / 現代史 / ネイション・ビルディング / 心象地理 |
Research Abstract |
本年度の「研究実施計画」である (1)1960年代以降の文化政策に関するアーカイブ調査 (2)市民団体「全ロシア史跡・文化財保護協会」の実態調査 (3)事例研究準備 は、ほぼ完全に実行された。 前期は主に先行研究整理と資料精読を行った。計画通り、先行研究整理、および現地調へ向けての課題を「1960-1980年代の宗教・文化政策とイデオロギー」と題して、『スラブ研究センター報告集第23号』に投稿した。そのほか、これまでの研究成果を2本の論文にまとめ、発表することができた。 さらにロシアでの研究協力者の示唆により、同時期の歴史観、イデオロギー政策と深くかかわりながらも、いまだ研究の浅い映画『アンドレイ・ルブリョフ』(1967年、A.タルコフスキー監督作品)に注目し、これを"А.А. ТарКоВсКИЙ И ЛЮбИТеЛИ ТраДИЦИОННого ЛанДШафТа: На ПрИмере 《АНДреЙ РубЛеВ》 (1967г.)"(アレクサンドル・タルコフスキーと伝統的景観を愛する人々:映画『アンドレイ・ルブリョフ』より)と題して、"Свеча-2007"に投稿し、さらに9月5-9日にロシア、ウラジーミル州その他で開催された国際学会"Istoki-XII" (Sources-XII) "Andrey Tarkovsky: Films, Religion, Media and Education"で報告をおこなった。 史跡保存のための政策と運動に関しては、国立連邦アーカイブ、同現代史アーカイブの資料を基に、ソ連共産党中央委員会、ロシア連邦文化省の政策を明らかにするとともに、「全ロ史跡・文化財保護協会」の活動を調査した。後者については、現地研究者の協力を得て、インタビュー調査の準備も整えられつつある。さらに、事例研究としては、ソロフキ島の修道院史跡保護に関して、国立アルハンゲリスク州アーカイブおよび図書館などの資料から不足点を補い、これを"ИНТерПреТаЦИЯ ПаМЯТНИКОВ ИсТорИИ И КуЛЪТуры ГЛаЗаМИ "бЛИЗКого Круга" И ШИроКоЙ обЩесТВеННосТИ"(史跡・文化財に向ける「親密圏」および公共圏の眼差し)として"ВесТНИК ПоMорсКого уНИВерсИТеТа"に投稿した。その他の事例に関しては、図書館およびアーカイブでの資料収集を行うと同時に、フィールドワークに向けて地元の研究者に協力を要請した。
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