2007 Fiscal Year Annual Research Report
複数の核遺伝子マーカーにもとづく汎熱帯海流散布植物の種分化過程の解明
Project/Area Number |
07J02524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高田 浩司 Chiba University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 系統地理 / 種子散布 / 汎熱帯海流散布植物 |
Research Abstract |
研究目的と方法:汎熱帯海流散布植物オオハマボウと近縁4種を対象に、複数の核遺伝子マーカーにもとづく系統関係と全球的な遺伝的構造を解析することにより、広域分布種を母種とした種分化過程の解明を行うことを目的としている。 研究成果:1、小笠原諸島、ニューカレドニア・タヒチ・マルケサス諸島、ブラジルで複数種の海流散布植物を採集した。リオディジャネイロ植物園の研究者と協同で、オオハマボウとアメリカハマボウの生殖的隔離に関する実験を立ち上げた。人工交配では両種の生理的な生殖隔離は不十分であることが確かめられた。 2、マイクロサテライトマーカーを用いて、集団のクラスタ分析やAssignment Testをおこなったところ、オオハマボウではインド洋と太平洋の地域集団間には大きな遺伝的分化が見られないが、大西洋の集団は種レベルに匹敵するほど分化していることが明らかになった。また、オオハマボウとアメリカハマボウ遺伝的に明瞭に区別することができた。これは、両種の葉緑体遺伝子の共有が祖先多型ではなく、遺伝子浸透によって生じた可能性が高いことを裏付ける結果である。 3、合計16個の核のローコピー遺伝子座をスグリーニングし、系統解析に適した遺伝子領域を探索した。GBSSI相同遺伝子がシングルコピーであり、イントロン部位にギャップを持たないなどの扱いやすい特徴を持つことが分かった。オオハマボウと近縁種の64集団80個体を用いて、GBSSI相同遺伝子の部分配列1,508bpによる系統解析をおこなったところ、主要な5つのクレードが認識された。そのうちクレードIはハマボウのみからなるが、それ以外の4つのクレードではオオハマボウと他種が混在していることが分かった。これらの結果は、オオハマボウを母種として複数の種が分化してきたという仮説と矛盾しないが、解析した遺伝子領域が祖先多型の影響を受けている可能性も排除できない。
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