2007 Fiscal Year Annual Research Report
シアノ架橋型金属錯体を用いた分子磁性体の合成と、新規磁気・電気・光学機能性
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07J02603
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高坂 亘 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子磁性体 / 金属錯体 / シアノ架橋型金属錯体 / 焦電性 / 非線形光学効果 / 第二高調波発生 / スピンクロスオーバー / 透明カラー磁性薄膜 |
Research Abstract |
1.既に得られていた、自発電気分極を持つ焦電性常磁性シアノロ橋型金属錯体、[{MnII(pyrazine)(H2O)2}{MnII(H2O)2}{MoIV(CN)8}]、4H2Oをベースとし(W.Kosaka, et. al.Bull.Chem.Soc.Jpn.80,960(2007).)、構築素子を常磁性の[NbIV(CN)8]4-へと換えることにより、[{MnII(pyrazine)(H2O)2}{MnII(H2O)2}{NbIV(CN)8}]、4H2O単結晶を合成することに成功した。本錯体はMo錯体同様、b軸方向に自発電気分極(P)を持つ結晶構造を持ち、磁気測定の結果からa軸方向に磁化容易軸を持つ、磁気相転移温度が48Kのフェリ磁性体であることが分かった。また、自発電気分極の存在に起因する第2高調波発生の観測にも成功している。すなわち、本錯体は焦電性フェリ磁性体であり、電気物性と磁性の交差相関を検討する上で重要な化合物であると考えている。 2.オクタシアノ金属錯体を構築素子とした集積体としては初めてのFeIIスピンクロスオーバーを示す化合物、[FeII(3-pyridinemethanol)4]2[MoIV(CN)8]、3H2Oの合成に成功した。本錯体は立方晶系の高い対称性を持ち、FeとMoがシアノ基で架橋された三次元の結晶構造を持つ。また、本錯体のFeIIスピンクロスオーバー挙動は、従来のFeIIスピンクロスオーバー錯体と比べて非常に緩やかな挙動を示すのが特徴である。本系のように、FeIIサイトがシアノ錯体を介した共有結合で結びついたような、スピンクロスオーバーサイト間に働く相互作用が強いと考えられる系で、このような緩やかな転移が観測されるのは奇妙なことであり、転移挙動の解析から相転移について興味深い知見が得られるものと期待される。また本研究からの展開として、反磁性の[MoIV(CN)8]4-を常磁性構築素子である[NbIV(CN)8]4-に置換した系の合成も、我々のグループの中で進展している。この分野は世界的に競争が激しく、特に[Nb(CN)8]系は今後数多くのグループから報告が出てくると考えられる。 3.我々はこれまでに、陽イオン交換膜Nafion中にシアノ架橋型金属錯体微粒子が分散した透明複合膜を報告しているが(W.Kosaka, et. al.Inorg.Chem.Commun.9,920(2006).)、その高い透明性が各種分光測定、特に時間分解分光測定に有利であることから、現在他グループとの共同研究が進んでいる。既に幾つかの研究成果が、国内外の学会にて発表されている。
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Research Products
(6 results)