Research Abstract |
特別研究員申請時の年次計画(2年目)に照らし合わせ,昨年度までに開発した4次元変分データ同化を導入した物質輸送モデルを用い,衛星観測データを用いた黄砂のデータ同化・発生源逆推定および,採用期間2年間で行った研究のまとめ・発表・応用の2点に重心を置いて研究を行った. まず,衛星観測データを用いた黄砂のデータ同化および発生源逆推定に関する研究であるが,当研究ではエアロゾル研究に広く用いられているMODISのエアロゾル光学的厚さを用いた.データ同化および発生源逆推定の結果は,非常に良く東アジア域の黄砂現象を捉えており,昨年度までに行っていた地上ライダー観測データを用いた結果と良い一致を見せた.これは,衛星データを用いた黄砂のデータ同化が実行可能であることを示すとともに,地上ライダーデータと統合した総合的な同化システムの開発の可能性を示唆していると言える.この結果を国際ジャーナル誌の論文をしてまとめ,発表を行った. 2点目のまとめ・応用研究であるが,開発したデータ同化システムは2007年に日本に飛来した大規模黄砂現象に適宜適用され,その結果得られた高精度の三次元・発生分布は,輸送過程・変質の解析に用いられ,国際ジャーナル紙や国際学会で発表が行われている.2008年6月に米国・ボルダーで行われた国際ライダーシンポジウムでは,当研究のデータ同化結果を用いた研究を行った共同研究者に対してINABA Prize(The best paper presented at 24th International Laser Radar Conference)が授与された.また,2008年9月ドイツ,ライプチヒで行われた第三回国際ダストワークショップにおいて,本研究で開発されたデータ同化システムを表題した招待講演を行い,高い評価を頂いた.一方で,本研究で開発された同化システムは黄砂以外の大気汚染物質にも応用され,一酸化炭素や窒素酸化物の越境大気汚染および発生源の推定に関する研究に大きく寄与を行っており,これらの結果は国際ジャーナル誌に発表もされている.
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