2007 Fiscal Year Annual Research Report
弱サブクール状態の超流動ヘリウムに現れる異常に高い熱伝達率を持つ膜沸騰現象の解明
Project/Area Number |
07J02649
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高田 卓 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超流動ヘリウム / 可視化 / 膜沸騰 / 過熱 / 不安定性 |
Research Abstract |
本年度は主に透明な狭隘流路を作成して実験し、沸騰開始時のHe II-He I界面の可視化に成功するなど成功を収め、He II膜沸騰についての知見を深めた。細線ヒータによる膜沸騰時の蒸気膜厚さの計測への取り組みも始めた。 透明な狭隘流路については酸化インジウム薄膜を蒸着したガラスと、ガラス板の2枚を間にスペーサーを挟みこんで狭い平行平板流路を形成した。流路幅を狭くすることで、これまで詳細に観測された例の無い加熱によるHe II-He I界面の可視化に成功し、加圧He II中に起こるHe II、 He I、He Vapor三相の共存する膜沸騰状態について、特に沸騰開始期について圧力の効果を明確にすることに成功した。沸騰開始期においては例え同じ熱負荷をかけても圧力条件によって変化する蒸気密度と、液相の圧力の差があるためその伝播速度には大きな違いがあり、圧力を下げるほどその伝播速度は速くなる。本研究の目的の一つである膜沸騰モードを区分する安定-不安定分岐に対して、熱的な不安定性だけではなく流体力学的な不安定性がかかわることを明示する結果といえる。また、狭隘な流路に特有な現象として、飽和蒸気圧下のHe IIの膜沸騰開始期において過熱されたHe II相と過熱されたHe I相の相転移界面を捉えることに世界で始めて成功し、この界面を伴って沸騰を起こす際に見られる、周期的な気泡の発生・崩壊のサイクルを発見した。このサイクルは非常に高い沸騰熱伝達率を持つと予想され、その範囲はλ圧力を挟んで約10kPa〜飽和蒸気圧近傍にいたるまでの範囲である。弱サブクール状態で異常なピークを持った膜沸騰熱伝達率が観測されることと密接なかかわりがあると予見される。
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Research Products
(4 results)