2007 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄小脳変性症モデルマウスの作製と発症メカニズムの分子生物学的・病理学的解析
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07J02677
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
足立 直子 Kobe University, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | SCA14 / 脊髄小脳変性症 / カルシウム / TRPC3 |
Research Abstract |
SCA14変異型PKCγ発現細胞では、細胞内Ca^<2+>の半減期が野生型と比較して長く、このCa^<2+>流入は2-APB、SKF-96395処置によって阻害されたことよりTRPCチャネルの関与が考えられた。そこで、小脳に多く発現しているTRPC3に注目し細胞内での野生型とSCA14変異型PKCγのTRPC3に対するリン酸化能を検討した。結果、野生型では刺激依存的にTRPC3のリン酸化が検出されたが、SCA14変異体では有意なリン酸化は確認出来なかった。また、SCA14変異型PKCγは野生型と同様に、刺激依存的に細胞質膜へとトランスロケーションし、in vitro酵素活性測定においては恒常的に活性化状態であり、高い酵素活性能を有している。つまり、活性化状態にある変異体は刺激に応じて細胞質膜へとトランスロケーションするにもかかわらず、細胞質膜上の基質をリン酸化することが出来ないという矛盾が生じていた。そこで、野生型と変異型PKCγの一分子における細胞質膜上での動態を、全反射顕微鏡を用いて観察した。結果、1分子における変異体の細胞質膜滞在時間は野生型に比べて有意に短縮していた。さらに、この膜滞在時間の短縮はC1ドメインの機能不全によって引き起こされること、つまり、膜上に産生されるジアシルグリセロール(DAG)との結合能の低下が原因であることがわかった。これらの結果をまとめと、野生型PKCγでは生理刺激に応答して細胞質膜へとトランスロケーションしDAGと結合する。活性化したPKCγは細胞質膜上でTRPCチャネルをリン酸化し、細胞外からのCa^<2+>流入を止める。一方で、変異体も生理刺激後の細胞内Ca^<2+>の上昇に応じて細胞質膜へとトランスロケーションはするが、細胞質膜上のDAGと結合することができない。結果、酵素活性能を有しているにもかかわらず、細胞質膜上に十分に留まることが出来ず、チャネルのリン酸化に失敗する。その結果、細胞外からのCa^<2+>流入を抑制出来ない。このような過剰なCa^<2+>流入がSCA14において神経細胞死を引き起こす1つの原因になる可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)