Research Abstract |
本研究は,産業構造の第三次産業化における事業所サービス業の「東京一極集中」の実態とその要因解明を行うものである.本年度は既存研究と方法論の再検討から行った.既存研究において経営コンサルティングサービス業は,オフィス立地論やサービス産業論,グローバルシティ論や地域イノベーションシステム論の中で論じられてきた.イギリスのWood, P.A.を中心とするグループは,KIS(知識集約型サービス,Knowledge Intensive Serviceの略)の観点から,地域的不均等発展,地域イノベーションシステムとの関係において,経営コンサルティングサービスの在り方を論じている.また,フィンランド南東地域の事例では,経営コンサルティングサービスのような知識集約型事業所サービス業(Knowledge Intensive Business Service, KIBS)は,業種によって地域に根付くものと,根付かないものがあるが,これらの業種は期待されるほどの成果を上げていないと結論づけている.日本においては,都市地理学的観点からの分析にとどまり,経営コンサルティングサービスと地域の問題については,未解明な点が多く残されている.そのため,現地調査が必要となるが,この点については,山梨県甲府地域における調査の結果から精査した.本調査から得られた結果は,山梨県甲府地域においては,商工会議所や産業支援機構などの公的な性格を有する機関が,甲府地域に立地する中小企業に対して,経営コンサルティングサービスを供給してきたことである.とはいえ,これらの機関は近年,税理士や中小企業診断士などの「外部専門家」といわれる個人事業者へと業務委託を行い,これらの機関自体はサービス仲介者となっている側面も確認できた.本調査と既存研究の検討を行った結果,サービスそのものに着目する必要が生じていると考えられる.
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