2007 Fiscal Year Annual Research Report
Re-Os法による火山性塊状硫化物鉱床の年代決定および海洋の酸化還元環境史の解読
Project/Area Number |
07J02740
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 達生 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 地球化学 / 別子型鉱床 / Re-Os法 / 火山性塊状硫化物鉱床 / 海底熱水鉱床 / 酸化還元環境 / 付加体 / 三波川帯 |
Research Abstract |
本年度は、(1)硫化物試料に適用するRe-Os分析手法を確立し、(2)別子型鉱床の模式地である愛媛県別子鉱床のRe-Os分析を行い、その生成年代決定を行うことを主な目標とした。 (1)に関しては純粋な硫化物のみの粉末試料をするために、ジヨードメタンを用いて重液分離を行い、軽い珪酸塩鉱物を除去することにした。重液分離前後の粉末試料に関して蛍光X線回折法による分析を行い、珪酸塩鉱物が除去されていることを確認した。Re-Os分析において最も重要なのは、予め加えるスパイク量と試料量の比を適切に調整することである。通常は文献調査を行い、濃度の大体の見当を付けてスパイク量を決定する。しかし、別子型鉱床のRe-Os分析例が世界に全くないため、何度も再分析を行うことにより適切なサンプル量とスパイク量の比を見出すことに成功した。 (2)に関しては、愛媛県別子鉱床だけでなく埼玉県金石鉱床、和歌山県飯盛鉱床、徳島県高越鉱床、愛媛県佐々連鉱床の合わせて5つめ鉱床に関してもRe-Os分析を行い、鉱床の初生的な生成年代決定を行うことに成功している。このように、本年度は日本列島の別子型鉱床を東西方向に広く分析を行い、生成年代の傾向を見ることに主眼を置いた。分析結果から愛媛県〜埼玉県という東西の広い幅で見ても、別子型鉱床の生成年代は150〜160Maに集中していることが明らかになった。この分析結果から以下の3つの結論が導かれる。 (i)Re-Os法による年代決定は、三波川変成作用を被った試料に対しても有効である。 (ii)別子型鉱床の生成環境は、大陸地殻から数千km離れた遠洋〜半遠洋域である。 (iii)還元的な環境下で生成する別子型鉱床の年代値が150〜160Maに集中していることは、ジュラ紀末期において海洋環境がグローバルに還元的になったことを示唆している。
|