2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02774
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菱田 真史 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 自己組織化 / ダイナミクス / リン脂質二重膜 / 相分離 / 秩序変数 / 塩析 / 時分割x線小角散乱 / 中性子スピンエコー |
Research Abstract |
これまでの膜構造形成に関する研究成果を更に発展させ、ソフトマター一般について自己組織化構造の形成メカニズムの解明を目指して研究を行ってきた。具体的には、平衡構造に関する研究に加え、特に「自己組織化過程における緩和挙動」についての理解を重視しながら研究を進めてきた。試料としてはこれまで扱ってきたリン脂質の系を用いて実験・考察を行なった。まず平衡系としてはリン脂質と塩の混合系で観測されるラメラーラメラ相分離がリン脂質二重膜の塩析効果によるものであることを見出し、積層膜の秩序化において新たな秩序変数を提案することができた。また時分割X線小角散乱をもちいたリン脂質の水和による自己組織化の過程の観測は、リン脂質と塩の混合系に加え二種のリン脂質混合系でも行った。その結果、相の混ざり合いと相分離のダイナミクスを詳細に観測でき、Fokker-Planck方程式等を用いた非平衡論的議論を行うことで、本質的に自己組織化の過程をきめている物理量のひとつとして膜の弾性が重要であることが示唆された。さらに弾性の違いによる膜のダイナミクスを観測するため中性子スピンエコー測定を行うことで、膜弾性の温度依存性を明らかにした。これらの結果は自己組織化メカニズムの解明するために明らかにすべき自由エネルギーランドスケープにおいて、どのようなパラメータが系の構造を本質的に決める秩序変数になるのかということを実験的に提案するものであり、本質的に自己組織化の過程をきめている物理量を明らかにしていくために不可欠な結果である。これらの結果は5報の論文としてまとめ出版され、また国内外の学会において発表を行った。
|
Research Products
(10 results)