2008 Fiscal Year Annual Research Report
触覚と視聴覚間の共通性を規定する短期的・長期的記憶メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J02780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鍋田 智広 Kyoto University, 大学院・教育学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 触覚 / 感覚様相間共通性 / 記憶表象 / メタ記憶 / 発達障害 |
Research Abstract |
報告者は触覚を中心として,触覚と視覚,聴覚の間の共通性を可能にする記憶のメカニズムの解明を目的とした研究を行った。本年度は特に長期的な記憶メカニズムを取り上げて触覚とその他のモダリティとの通様相性を検討した。また,こうした通様相性に及ぼすメタ認知の影響を検討した。これらの研究を行った結果,触覚と視覚の間の通様相性は記憶の負荷に影響されやすく限定的であること。触覚と視覚の間の通様相性はメタ認知を促進することによってはほとんど影響を受けないことが示された。これらの研究成果は,触覚においては触覚独自の物体性質が記憶として利用されやすいことを示唆している。我々はほとんど視覚に頼った生活をおくっており,したがって触覚独自の物体特性の重要な役割には気づきにくかった。本研究は,普段看過されがちな触覚固有の物体特性の,記憶表象内での重要性を指摘した点に意義がある。また,発展的研究において,異種感覚モダリティ間の通様相性を規定する重要な性質として,対象からの意味の抽出,および適用のプロセスを取り上げ,検討した。自閉症幼児を対象として,彼ら彼女らの意味処理能力を検討した。その結果,自閉症幼児においても典型発達児と同程度の意味処理能力が見いだされた。この点から,意味処理能力には自閉症によって保たれる能力があることが示された。従来自閉症においては意味処理能力が冒されることが示唆されており,本研究は自閉症においても保たれる意味能力があることを示すことによって,意味の内容に注目した研究が今後必要であることを示した点に意義がある。
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Research Products
(5 results)