2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02786
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 賢哉 The University of Tokyo, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算量理論 / 通信計算量 |
Research Abstract |
本年度は、計算における時間と空間の能力差の解明という目的のもと、通信計算量の概念と技法を利用した計算モデルの具体的な下限に焦点をあて研究を遂行した。特に、安定集合多面体の構造に関連した技術を利用することによって既存の研究に対して新たな切り口を開く研究を重点的に行った。 まず、本年度の最初の3か月程度で既存研究の調査と問題点を整理し、またこの目的のため6月に米国のサンディエゴで開催されたFCRC(STOC,CCC)といった国際会議へと参加し研究の最新動向を調査するということを行った。これらに基づき研究の方向性を吟味し、本年度は以下で述べられるような大きく分けて3つにまとめられる研究を行った。 1つ目は、通信計算量での組み合わせ論的議論を利用した単調論理回路の深さの下限の証明手法に対して、一般の論理回路の深さの場合への拡張可能性に関する解析を行った。これに対して、計算機実験と理論解析を組み合わせながら分析を行った結果、一定の知見を得ることができた。 2つ目は、整数計画問題のLP緩和を利用した通信計算量の下限の証明手法に対して全く新しい制約式を導入し、その線形計画問題の解空間の構造を解析することを行った。計算機実験を行うことで本研究で導入した新しいアイデアが有効であることを示すと同時にこの結果を一般化しその解析を行った。その結果、長年の未解決問題である論理式のサイズの改良という課題に対して新しい方向性を提唱するまでに至った。この研究は、研究室内部での共同研究としてとり行われ、国際学会で来年度にポスター発表予定であると同時に、今後のさらなる発展が予想される研究成果である。 3つ目は、理想グラフの安定集合多面体のサイズに関する研究である。安定集合多面体のサイズは、ある種の通信計算量の問題と関連付けられることが知られている。一方で、有向グラフと無向グラフの共通の一般化として、双向グラフという概念が今までに研究されてきた。本研究では、多面体のサイズに関わる通信計算量の問題を双向グラフの問題へと一般化しその解析を行った。その結果、一般化された問題はもとの問題と計算量的に等価であることが研究成果として明らかになった。この研究は、現在のところ単独の研究として遂行しており、外部発表に向けてさらに内容を深めていく方針である。 また、これらの研究に平行して今までの研究成果を洗練させるとともに、これらの外部発表に向けての取り組みも順調に実施した。まず、計算量クラス間の関係に関する成果の1つを学術論文誌に投稿し採択され出版が決定した。さらにもう1つ計算量クラスと組み合わせ構造に関する別の成果を新しく発足した国際組織の会合AAAC2008に投稿し、来年度の4月に海外発表する予定となっている。
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Research Products
(2 results)