2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02786
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 賢哉 The University of Tokyo, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算量理論 / 論理式 / 線形計画法 |
Research Abstract |
本研究計画では、計算における時間と空間の関係を計算量クラス間の関係の解明を目的として、論理回路などの組み合わせ構造の尺度の下限を証明することにより、その本質を解明することを目指している。これは、計算の過程において必要となる時間と空間といった計算資源で定義される計算量クラスの非等価性を証明することにより、計算の本質とアルゴリズムの限界を解明しようとする試みであり、理論分野に限らず情報科学全般に渡って非常に重要な問題である。これに対して、長年にわたって多くの努力がなされる一方で未だに解決の糸口が見つかっていないのが現状であり、本研究では将来的に解決に結びつくような技術的貢献をすることを目的としている。論理式サイズの強い下限を示すことは、本研究課題の目的である計算量クラスの非等価性に直結する重要な方向性である。しかし、既存の証明技法の改善あるいは一般化の試みが多くの研究者によってなされる一方で、実際には下限の値を改良するまでには至らないというのが現状であった。これに対して本研究では、Karchmer,Kushilevitz and Nisanによって1995年に導入された線形計画法の理論を利用した論理式サイズ下限の証明技術に対して、安定集合多面体の理論に基づいた改良を加えることで、論理式サイズ下限を証明する一般的な新しい技術を導入した。この新しい技法を論理関数理論における最も基本的な論理関数の一つである多数決論理関数に適用することで、1971年に示されたKhrapchenkoによる古典的結果から論理式サイズ下限の値を改良することができた。さらに、単調自己双対論理関数の分解理論からの動機付けにより非平衡再帰3分多数決論理関数の概念を導入し、それらの論理式サイズの整数的に最適な上限と下限を示した。また、近年様々な研究分野で着目を浴びている平衡再帰3分多数決論理関数の単調論理式サイズに対して2005年にLaplante,Lee and Szegedyが開発した量子敵対者限界と呼ばれる証明手法により得られた値より改良された下限を示すことができた。そして、さらなる技術的改良に向けて継続的に解析作業を進めた。この成果に関しては、ヨーロッパにおいて毎年開催される権威のある国際会議であるSTACS2009に採択率19%(280件投稿中の54件採択)という非常に厳しい競争と3人の専門家による査読を通過し、2009年2月26〜28日にドイツのフライブルクで開催された発表を行った。またこれらの研究に平行して、計算量クラス間の関係に関する今までの研究成果2本を年度内に学術論文誌に出版、そのうち1本については4月に香港で開催されたAAAC2008で口頭発表を行った。
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Research Products
(6 results)