2007 Fiscal Year Annual Research Report
子どもはなぜ「はい」と答えるのか -反応バイアスのメカニズムの検討-
Project/Area Number |
07J02795
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大神田 麻子 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 肯定バイアス / 反応バイアス / コミュニケーション / 語用論 |
Research Abstract |
本研究は、就学前児がなぜ大人の「はい/いいえ」質問(以下、YN質問)に誤って「はい」と答える(i.e.肯定バイアス)のか、そのメカニズムを解明することを目的としている。本年度のいくつかの研究で、3歳児は質問の内容に関わらずYN質問に対して肯定バイアスを示すことが分かった。3歳児は、ある物を見せて「これはX?」と聞く物の知識に関する質問以外に、好き嫌いや人気キャラクターの表情に関する質問に肯定バイアスを示した。また、これまでの研究で使用された質問対象(e.g.りんご、コップ、CPUや人気キャラクターの顔の描いてあるカード)を対提示し、正しい回答を選ばせるという課題において、2〜3歳児は正しい方を選択することができた。すなわち2〜3歳児は質問の回答を知っているが、YN質問で聞かれると誤って「はい」と答える。したがって、2〜3歳児はYN質問に対して自動的に「はい」と答える可能性が示唆された。このことについ.て検証するため、肯定バイアスと抑制機能、言語能力との関連について調べたところ、抑制機能や言語年齢が低い子どもほど強い肯定バイアスを示すことが分かった。おそらく「はい」反応は優位な反応であり、2〜3歳児は「はい」と答えることを抑制できない。また、言語能力と肯定バイアスに関連より、YN質問に正しく答えるためには、語用論的理解など質間者の意図を読み取る能力が必要である可能性が示唆された。本年度の研究では、子どもがどのような状況で肯定バイアスを示すのか、肯定バイアスがどのような能力と関連しているのかを調べることで、肯定バイアスのメカニズムの解明を試みた。子どもが他者との質問のやりとりを円滑かつ正しく行えるかどうかを調べることは、子どものコミュニケーション能力、あるいは語用論的理解の能力を調べることである。近年、発達心理学の分野で語用論研究は注目を浴びている分野であるが、本研究は数少ない子どもの語用論的理解の発達に関する研究であり、これらの研究の先駆けとなるものである。
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Research Products
(4 results)