2008 Fiscal Year Annual Research Report
エチオピア南西部高地森林域の生態誌と地域住民による内発的森林保全の可能性
Project/Area Number |
07J02807
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 義将 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フォレスト・コーヒー / 自然資源管理 / 内発的森林保全 / 在来知 / 熱帯高地森林 / Coffea arabica / Aframomum corrorima / エチオピア |
Research Abstract |
本研究はアフリカにおける地域住民による内発的森林資源の保全、及び持続的利用の可能性を検討することを目的としている。今回の調査では野生種のコーヒーノキ(Coffea arabica:アカネ科)が自生する森林において、地域住民の活動が森林にどのような影響を与えているかを確認するために、2年前に森林内の地域住民が大木を伐採した跡地で植生調査を行った。2年前に行った植生調査のデータを分析した結果から、森林に自生する植物の利用及び、蜂蜜の収集活動が、森林内に自生するコーヒーノキの成長を促進しているという仮説を立てたが、今回の調査結果から、森林はもっと複雑な遷移過程を辿っており、その遷移過程には人びとが有用植物として利用する数種の樹木(例えば、Cordia africana:ムラサキ科、Olea welwitschii:モクセイ科)やコーヒーノキ、そしてコロリマ(Aframomum corrorima:ショウガ科)が大きな役割を果たしていることが明らかになった。 また、今回の調査で森林に自生するコーヒーノキの性質、コーヒーの市場価格、そして地域住民の労働形態という様々な要素が絡み合って、森林が全て伐採されることはなく維持されていることが明らかになった。 これまで、森林保全を検討する際に森林内のごく一部のそして一時的な状態を植生調査からとりあげ、人間が森林に与える影響が述べられてきた。しかし、今回の調査から長期的な森の植生の遷移過程、そしてその遷移過程や森林に自生する植物の性質などが、逆に人間の行動を規制する要素にもなっていることがわかった。この研究は長期的に自然と人間の両方の変化に注目することが、自然保護や人間と自然の共生を考えるうえで重要であることを示す事例を1つ加えることになり、人間が一方的に自然を破壊しているというステレオタイプ的な考えを見直す大きな契機となることであろう。
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Research Products
(4 results)