2007 Fiscal Year Annual Research Report
「場所」の人類学:モンゴル国・ウランバートル市の空間編制の変容から
Project/Area Number |
07J02926
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西垣 有 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 場所 / 都市計画 / 私有化=民営化 / モンゴル |
Research Abstract |
本研究は、旧社会主義圏に位置するモンゴル国の首都ウランバートル市を事例に、冷戦後のグローバルな市場経済化とプライヴァタイゼーション(私有化=民営化)の進行にともなって現れつつある新たな空間性をとりあげ、その空間性が特定の知や実践と結びつきながら、どのようにわれわれの生を形作っているかを明らかにすることを目的とする。研究を進めるにあたって焦点となるのは、モンゴルにおける2002年以降の「土地の私有化」と、ウランバートル市の「新たな都市計画」という、市場経済化に対応した二つのプロジェクトにおける空間編制のあり方と、それらと相関的に現れる住民の居住のかたち、および、両者の相互関係である。 そのため、本年度は、近年急増しているウランバートル市への移住者の受け皿となっている市周辺部の「ゲル地区」(ゲルは遊牧民の天幕)と呼ばれる地区と、ウランバートル市の都市計画研究所という二つの場所で調査を行なった。 この調査によって、本研究では、従来から行ってきた研究を継続し、論文の執筆をすすめると共に、新たに、土地の私有化の進行にともなって生じつつある都市計画のパラダイム転換と、NGOを媒介とした「ゲル地区」での公共空間の創出という現象を考察する必要に迫られた。市場化、プライヴァタイゼーション(私有化=民営化)が地球規模に拡がる現在、国家と個、公と私などの従来からの二項図式に対して、NGOや市民社会など住民参加型のプロジェクトが注目されているが、本研究課題を遂行するためには、諸アクターの接触、交渉に注目しながら、このような枠組みが住民の生をどのように捕捉しているかを明らかにしていくことが求められる。
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