2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代中央アジアにおけるイスラーム王権とその統治機構:ブハラ・アミール国を中心に
Project/Area Number |
07J02958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 暁 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中央アジア / イスラーム王権 / ブハラ・アミール国 / ロシア帝国 / トルキスタン / 近代史 |
Research Abstract |
2007年8〜10月および2008年2〜3月の二度の渡航機会を利用して、ウズベキスタン、タジキスタン、ロシアで文献の収集・調査に取り組んだ。各国の東洋学研究所でブハラ・アミール国史に関する写本史料を、まだウズベキスタン中央国立アルヒーフ、ロシア民図書館等ではブハラやロシア領トルキスタンの行政文書はじめとする中央アジア近代史に関係る様々な史資を実地に調査し、これと並行して各地で重要文献の購入も行った。こうして得られた情報と知見にもとづいて、まず、ロシア統治期におけるブハラ・アミール国治下のスンナ派・シーア派関係の展開と、ブハラのスンナ派イスラーム王権のイデオロギー的変容に分析を加え、その成果を2007年12月の国際学会で発表した(これは論文として英語の論集に掲載予定)。この分析を通じて、ブハラ王権のイデオロギーと統治機構のあり方にロシア帝国のプレゼンスが少なからぬ影響を及ぼしたという見通しが得られた。また、サマルカンドがロシアの直轄領に組み込まれた経緯とその統治の始動の状況について、当事者としてこれに関わったイスラーム法官の手記をもとに検討を加えるとともに、このテュルク語の手記の史料的価値を吟味した。その成果は2008年1月のシンポジウムで発表した。なお、この手記についてはテキストの翻刻・訳注の出版準備を進めており、2008年度中に刊行される予定である。さらに、ブハラ・アミール国領内の諸勢力がロシア帝国の征服と統治にいかに対応し、かつそれが現代ウズベキスタンの歴史問題の文脈においていかなる意味をもつかに考察を加え、2008年3月の学会で成果報告を行った。また、中央アジアとイランそれぞれの地域イメージの歴史的変遷を諸史料から通時的に跡づけて論文にまとめ、これは同年2月に論文集『地域認識論』(講談社刊)に掲載された。
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Research Products
(4 results)