2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02999
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
細川 健太郎 Keio University, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 幹細胞制御 / 細胞接着 |
Research Abstract |
[研究成果と意義・重要性]本年度はまず、野生型N-カドヘリン(N-cad)あるいはb-catenin(b-cat)結合部位欠損型N-cad(改変型N-cad)を発現させた造血幹細胞のb-catの局在解析を行った。野生型を導入した場合b-catは細胞膜周辺に局在するが、改変型の場合は核内への局在がみられた。また野生型N-cad導入造血幹細胞でのみ、GSK-3b阻害剤存在下でのb-catの核内移行が抑制されることがわかった。次にそれぞれのN-cadを導入した造血幹細胞において、細胞周期の静止状態の比較を行うため、我々が確立した細胞分裂速度の評価系に、N-cad-Fcキメラタンパク質をコーティングした培養環境を組み合わせて検討した。野生型N-cad導入造血幹細胞はControlと比較して有意に細胞分裂を抑制したが、興味深いことに改変型の場合は分裂を促進した。さらに、野生型、改変型N-cad導入造血幹細胞の長期骨髄再構築能について、連続移植法を用いて検討した結果、野生型のN-cadを導入したものは2回目以降の移植でレシピエント側が優位になっていくのに対し、改変型では3回目の移植で再構築能を失うことが分かった。以上の結果を総合すると、N-cadを介した骨芽細胞ニッチと静止期造血幹細胞の接着は、b-catの核内移行を阻害することで、幹細胞の増殖を抑制し、静止期の維持に働いていると考えられた。 本研究の成果は、骨髄内のニッチと造血幹細胞のN-cadを介した細胞接着が静止状態を制御する機構を明らかにするための手掛かりとなりうる。また本研究の知見から、前述のキメラタンパク質や阻害剤を用いることで、幹細胞の接着や細胞周期に対する外部から制御を可能にするという点で、非常に意義深いと考えられる。
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