2007 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における量子臨界点の新奇な臨界性と波及効果の研究
Project/Area Number |
07J03063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三澤 貴宏 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子臨界現象 / 非フェルミ液体的挙動 / 重い電子系 / Yb化合物 |
Research Abstract |
対称性を破る相転移(強磁性転移、反強磁性転移など)の臨界温度が絶対零度に落ち込んだ点を量子臨界点と呼ぶ。この量子臨界点近傍では低温での物理量(比熱、抵抗率など)の温度依存性は通常の金属相を記述すると考えられているランダウのフェルミ液体論に従わず、いわゆる非フェルミ液体的挙動が現れることが理論・実験の両方から指摘されている。さらに、この通常の金属の性質が大きく変わり非フェルミ液体的挙動が現れる量子臨界点近傍で異方的超伝導などの強相関電子系特有の新奇な現象が発現している。このことから、量子臨界点の性質が強相関電子系などで数多く見られている新奇な現象と密接に関わっていると考えられており、その本質を明らかにする研究が注目を集めている。従来の量子臨界点の研究では主に連続相転移のみに焦点があてられてきたが、今年度の我々の研究で一次相転移の近接効果が新しい非フェルミ液体的挙動を生み出すことが明らかになった。 有限温度で連続相転移が一次相転移に切り替わる点を三重臨界点と呼ぶ。そして、この三重臨界点の臨界温度が絶対零度に下がった点が量子三重臨界点である。今回の研究で、我々はこの量子三重臨界点の臨界性を従来のスピン揺らぎ理論を拡張することで明らかにした。量子三重臨界点の最も特筆すべき特徴は秩序変数の揺らぎだけでなく、一般に波数0の揺らぎも同時に発散することである。我々は磁場下の反強磁性量子三重臨界点では反強磁性の揺らぎだけでなく、強磁性の揺らぎも同時に発散することを示し、その臨界指数を特定した。この二つの異なる揺らぎの発散は通常の量子臨界点には見られない量子三重臨界点に特有の現象である。 さらに、我々はこの量子三重臨界性が通常の量子臨界点の理論に従わない典型的な物質として知られているYbRh2Si2の非フェルミ液体的挙動を説明することを示した。特に、一様帯磁率の温度依存性と磁化の磁場依存性が量子三重臨界性で定性的だけではなくて定量的にもよく説明できることを示した。既存の理論では説明することのできなかったYbRh2Si2の非フェルミ液体的挙動の起源を明らかにしたのが今年度の〓
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