2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 憲雄 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表 / 状 / 批答 / 致仕 / 摂関制 / 官人の階層化 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、上表・批答の検討を通じて古代日本の国内秩序を検討することであった。上表とは、皇帝・天皇に対する上聞文書の「表」を提出する制度であり、日本では8世紀末の桓武朝で本格的に導入されているが、従来はあまり注目されていなかった。そのため、拙稿で明らかにした「書儀」の規定をもとにして、新視点として批答(皇帝・天皇からの回答)の分析と同時期の外交文書との比較を当初の計画としていた。 これに加えて、「表」と類似の上聞文書、「状」が表とともに使用されていることから、新たに「状」の分析も行い、9世紀を中心とする古代日本の国内秩序の変化を検討した。その結果、以下の点を明らかにすることができた。 第一に、唐では創業期から表・状双方が使用されており、その用途もほぼ重複しているが、日本で状の使用が開始されるのは860年代以降であり、用途についても致仕・辞大臣は表、辞大将・辞大納言以下は状という使い分けが形成されるなど、状の導入により臣下の階層性が設定されてくる。 第二に、唐では批答で官人個人を特別扱いすることは原則としてないが、日本では840年代以降、藤原緒嗣・良房・基経など、王権中枢と深い関係を持つ臣下のみをより高く位置付けるようになる。これはい第一の点とは別の形で臣下に階層性を設定するものであり、同時期に進行していた摂関制の成立と密接に関係する、新たな秩序の形成過程を示すと考えられる。 以上の研究成果は、2007年11月に名古屋古代史研究会、同12月に三田古代史研究会で報告しており、好反応を得た。また、2008年6月に予定されている大阪歴史学会大会での個人報告に応募して、審査の結果報告が決定している。この報告内容は、さらに審査を経た上で『ヒストリア』誌に掲載される予定である。
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Research Products
(2 results)