2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 憲雄 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 外交儀礼 / 国際秩序 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、北宋の契丹(遼)に対する外交儀礼、および契丹・金の北宋・南宋に対する外交儀礼に注目して、各々が抱く「国際秩序」を明らかにすることであった。当該期の外交儀礼に関する研究は、韓国の金成奎氏のものが存在するが、北宋-契丹間など重要な部分については未解明であるため、これらの検討を当初の計画としていた。 これに加えて、高麗・西夏や、金に臣従していた時期の南宋の外交儀礼に関しても、断片的な記述から復元し得ることから、北宋・契丹・金にとどまらず、周辺諸勢力が抱く「国際秩序」についても分析を行った。その結果、以下の点を明らかにすることができた。 第一に、北宋の契丹以外に対する外交儀礼は、国内の聴政制度(「対」の制度)と密接に関係しているのに対して、契丹に対する外交儀礼は聴政制度との関係を持たない。これは、北宋と契丹が対等関係である一方、契丹以外とは君臣関係にあることと対応しており、北宋のおかれた国際関係を如実に反映するものといえる。 第二に、契丹の北宋に対する外交儀礼は、北宋の契丹に対する儀礼と相互に関係するのに対して、契丹の西夏・高麗に対する外交儀礼は、北宋の西夏・高麗に対する外交儀礼とは大きく異なり、契丹の北宋に対する外交儀礼に近い。これは、契丹が北宋との対等関係を前提にしながらも、独自の国際秩序を形成していたことを示している。 第三に、高麗・西夏の北宋・契丹・金に対する外交儀礼、および南宋の金に対する外交儀礼では、下位の国王・皇帝が起立する場合でも君臣関係を示す北面の位には就かないことに加え、使者の拝礼を受ける場合もあるなど、各勢力独自の「国際秩序」が一定以上容認されている。同様の事例は、隋・唐と倭国・日本、高句麗、回鶻の間でも見えており、複数の「国際秩序」が重なり合いながらも並存していると想定できる。 以上の研究成果は、北宋に関する部分は拙稿「唐後半期から北宋の外交儀礼-『対』の制度と関連して-」の中に組み入れており、『史学雑誌』118編7号に掲載される予定である(7(1)(5))。また契丹・金に関する部分、高麗・西夏・南宋に関する部分も、今年度に報告の機会を与えられているので、それぞれ成稿の上公開していく。 なお、昨年度研究を実施した2論文、「九世紀の君臣秩序と辞官・致仕の上表-状と批答の視点から-」および「長徳二年大間書の本文と写本系統について」を学会誌に発表して、前者は大会報告も行っていることも申し添えておきたい。
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Research Products
(6 results)