2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 知久 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己組織化 / 超分子化学 / 核酸 / 分子認識 / 生体分子 |
Research Abstract |
生体内では、短いヌクレオチドやアミノ酸が水中で、特異的な水素結合することにより、精密な分子認識や酵素反応を実現している。しかしながら、水中でそれらを単純に混合するだけでは、無数の水分子により水和を受けて、特異的に水素結合を形成することは起こりえない。そこで、本研究では、水中で短いヌクレオチドを人工的な疎水性空間内に包接することにより、特異的に水素結合対を形成させることを目標としてきた。 前年度までの研究では、水中において、かご状錯体の疎水性内部空間へのAとUのモノヌクレオチドのペア包接と水素結合対の形成を達成し、論文として報告していた。平成21年度の研究では、異なる配列のGとCのヌクレオチドを用いて水素結合対の誘起を実現し、全4種類の核酸塩基配列の挙動を解明した。GとCの配列のモノヌクレオチドをかご状錯体内にペア包接させ、水素結合対の形成挙動をNMR測定およびX線結晶構造解析から明らかにした。その際、これまでのAとUの塩基対と異なる挙動も明らかにした。特に、GとCの塩基対形成では3本もの水素結合が関与するため、人工疎水場中での塩基対形成に顕著な選択性が現れた。これにより、本研究課題の掲げる、「人工疎水場を利用した水中での水素結合の誘起」という概念を実験的に検証出来たと言える。また、核酸のみならず、本手法を短いペプチド分子に対して応用することで、人工疎水空間を利用したヘリックス構造へのフォールディングも達成し、論文として報告した。 以上、本研究課題では水中での水素結合形成に関する基礎的な知見のみならず、水中で人工的な疎水性空間を用いた生体分子の精密な構造制御の手法も確立出来たと言える。今後、本研究を基に、長いオリゴヌクレオチドの配列認識やタンパク質の再生技術などへの発展が期待できる。
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Research Products
(3 results)