2008 Fiscal Year Annual Research Report
マルコフチェインの漸近的ふるまいと統計、生命科学への応用
Project/Area Number |
07J03140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌谷 研吾 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | モンテカルロ法 / 大標本理論 / エルゴード性 |
Research Abstract |
昨年に引き続きモンテカルロ法の漸近理論を研究した。この研究の目的は以下の三つあり、このうちの一つを達成し、一つはほぼ完成しつつあり、一つは進行中である。まず第一の目的は、EMアルゴリズムやマルコフチェインモンテカルロ法といった、生命科学などにおいて幅広く用いられているモンテカルロ法の理論的意味付けをすることにある。ほとんどの場合、これらの手法はうまく働き、統計推定量の計算に役立てられている。しかし、以前の研究ではこれらの理論の収束の意味付けがしっかりと言えていなかった。 第二の目的は、第一の目的を達成したもとで、上記モンテカルロ法がうまく働かない現象の理論的な意味付けをすることである。これには単なる、イレギュラーなモデルの研究という意味だけでなく、EMアルゴリズムなどの安定性を研究する上で土台となる意味がある。滑らかなモデルにおいて、上記モンテカルロ法より高速とされるアルゴリズムは数多くあるが、実際にシミュレーションをしてみると、EMアルゴリズムなどよりもうまくいかない場合も多い。イレギュラーなモデルの研究を通してみると、従来わからなかった善し悪しを見ることが出来る。 第三の目的は、EMアルゴリズムやギブスサンプリングがうまく働かない場合の改善策を提案することである。第二の目的を達成すれば、うまく働かない原因を理論的に定義できる。そのような状況を仮定し、より良いアルゴリズムを提案するのである。残念ながら、この第三の目的はまだ進行中である。 モンテカルロ法の研究は現状においては、ケーススタディや単なるシミュレーション研究に陥りがちである。今回の研究を通じて、モンテカルロ法の研究がアドホックでない学問的地位を確保し、有用なアルゴリズムを生み出す素地を作ることがねらいであり、モンテカルロ法で最も重要な二つのモデルに置いて、これを達成することが出来た。
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Research Products
(6 results)