2009 Fiscal Year Annual Research Report
粗視化タンパク質モデルの数値実験による細胞機能の再現と定量的統計理論の構築
Project/Area Number |
07J03179
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 久美子 Osaka University, 産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質シミュレーション / 非平衡統計力学 / 一分子実験 |
Research Abstract |
蛋白質分子モーターであるF_1-ATPaseやDNAヘアピンの一分子実験で非平衡統計力学の関係式を利用する研究を行った。 F_1-ATPaseに対しては揺らぎの定理を用いて回転トルク測定を行った。高速カメラを用い、回転トラジェクトリの揺らぎを正確に測定し、揺らぎの定理を用いて従来の方法よりも制度のよい回転トルクの測定に成功した。F_1の野生型のみならず、変異体や他の回転モーターであるV_1-ATPaseに対しても測定が成功した。 DNAヘアピンに対しては光ピンセットを用いて20nm程度の小さいヘアピンに周期外力を与えることに成功し、DNAヘアピンの開閉に関して確率共鳴の現象を観察した。確率共鳴は様々な物理系で観測されるが、一分子計測では我々の研究が初めての測定となる。SN比、周期外力のする仕事、滞在時間分布などの確率共鳴の研究で良く知られる量を測定し、DNAヘアピンの運動の特徴付けを行った。塩基対のペアの結合自由エネルギーからヘアピンの開閉に関する自由エネルギーの理論計算と確率共鳴の実験は一致する結果を得た。 F_1-ATPaseとDNAヘアピンの実験に関し、データをより深く理解するためにシミュレーションを用いて実験結果を再現することができ、これらの結果は現在、論文にまとめている。一分子実験で非平衡統計力学の関係式を適用する研究によって、生体高分子の統計性質を定量的に理解することが可能になった。
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Research Products
(3 results)