2007 Fiscal Year Annual Research Report
インドにおける大乗仏説論の研究-『大乗荘厳経論』『思択炎論』『入大乗論』を中心に
Project/Area Number |
07J03181
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀内 俊郎 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大乗仏説論 / 大乗仏教 / 『思択炎論』 / 『大乗荘厳経論』 / 『入大乗輪』 / 『釈軌論』 / 清弁 / 安慧 |
Research Abstract |
インドにおける大乗仏説論の解明を目的とする本研究の,本年度の成果発表は以下のとおり.まず,インドにおいて大乗仏説論を詳細に論じた文献である『釈軌論』について,その経典解釈者への指南書としての性格を論じた,また,同論の数パッセージが,『翻訳名義大集』所収のいくつかの語彙へ影響を与えていることを指摘した(ICANAS38にて).これは,チベット(蔵)語訳としてのみ残る『釈軌論』の梵文原語の想定に際して寄与するものであり,同時に,梵語・蔵語の語彙集である『翻訳名義大集』の当該箇所の出典を明らかにしたこととなる.さらに,瑜伽行派の聖典観を明らかにするという目的で,同学派によるウダーナとニダーナの定義の考察を行った.従来おもに漢訳をもとに考察がなされてきたこのテーマを,梵・蔵・漢訳文献の比較対照を踏まえて考察したものである. 他方,次年度以降の研究の基礎となる大乗仏説論関連文献のテキスト校訂・訳注作成の作業は,年次計画に沿う形で,以下のとおり進行中である. 1.『思択炎論』第四章の校本作成:蔵訳テキストについて,北京(P)・デルゲ(D)版の校訂作業を行った.来年度はこれに基づき,『釈軌論』などとの関連を考慮しつつ,訳注作業を行う. 2.『大乗荘厳経論』第一章の無性釈・安慧釈の和訳:蔵訳テキストの翻訳作業をひととおり終えた.今後は,関連文献との比較対象により,両注釈における大乗仏説論の論法の特徴を明らかにし,無性・安慧の大乗思想についても考察を行う予定である. 3.『入大乗論』の和訳・解読:漢訳文献である本文献については,大正蔵をもとにしながらも句読点などの訂正を行いつつ,訳注作業を継続中である.
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Research Products
(4 results)