2007 Fiscal Year Annual Research Report
住宅および地域空間の維持管理システムに関する歴史的研究
Project/Area Number |
07J03188
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 琢巳 Yokohama National University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 日本建築史 / ライフサイクル / 維持管理 / 資源保全 / 建築の寿命 |
Research Abstract |
本研究は伝統的な木造建築のライフサイクルのあり方とその維持管理システムに関するものである。本年度は幕領・飛騨国の建築史料収集および藩領のケーススタディとして盛岡藩・秋田藩の建築史料の収集を行った。前者はその分析結果を2編にわたり発表し、後者については来年度に継続して調査研究にあたり、その分析結果・考察を論文発表する予定である。まず、前者の概要を述べる。岐阜県歴史資料館が所蔵する飛騨郡代高山陣屋文書のなかに「番所普請」に関する建築申請がまとまって伝えられる。その記載形式の分析を通して、木造建築の管理システムの特徴を考察した。最も重要な点として、当該建物の工事履歴が明記きれる点が挙げられる。すなわち「屋根葺替」「修復」「建替」といった工事に至った過去の建築年齢を列挙した上で、当該の建築工事の申請を行っている。この記載形式を「適正な建築年齢」が把握された管理システムと評価し、「寿命の管理」という建築規制のあり方を論じた。そしてこの管理システムを、森林資源の保全という文脈に位置づけた。同時に、これら記載情報から江戸時代における建築の寿命(建替周期)を数値的に明らかに出来ることに着目した。集計結果として、当時の寿命が20年から80年ほどの幅を持ちつつ平均50年程度である実態を明らかとし、番所の建築形式が農家と同一系統である点を踏まえて、18世紀から19世紀前期における農家の寿命も、この結果から推察できることを提案した。後者のケーススタディでは、建築活動と森林保全(植林や森林保護)のつながりに着目して史料収集を進めている。例えば「代木植立」(建築規制にみられる伐採後の植林義務)、「備林」(建築の類焼・修復に備えた森林保全)といった仕組みに関わるものである。これらの分析から、木造建築と森林を包括した資源循環型の環境管理のあり方を追跡できると考えており、継続して研究を進める。
|
Research Products
(4 results)