2008 Fiscal Year Annual Research Report
住宅および地域空間の維持管理システムに関する歴史的研究
Project/Area Number |
07J03188
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 琢巳 Yokohama National University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本建築史 / ライフサイクル / 維持管理 / 森林資源保全 / 建築の寿命 |
Research Abstract |
本研究は伝統的な木造建築のライフサイクルのあり方と、その維持管理システムに関するものである。特に、江戸時代における木造建築と森林資源を一体的に捉えた組織的な環境管理システムの存在に焦点を当てている。本年度は藩領ならびに幕府直轄領という対比的なケーススタディを念頭に置き、史料収集を行なった。幕府直轄領・飛騨国における建築の管理システムについては、前年度に収集した史料(飛騨郡代高山陣屋文書、岐阜県歴史資料館所蔵)の分析に基づいて、今年度も2編の研究報告を発表した(「飛騨国の番所普請にみる木造建築のライフサイクルと森林資源の保全」その1・その2、日本建築学会関東支部)。引き続き今年度も、現地史料調査を実施した。この調査では、「家作木」と呼ばれた農家普請における建築用材に関する史料群に着目した。飛騨国の農村においては、建築工事の木材調達に際して、徹底した伐木規制のもとに置かれていた。そのため、農家普請に際して伐木申請、用材の交付許可、竣工検査にわたる建築規制に関わる記録が伝存する。これらの史料群は、飛騨国全域で年間に民家普請のためにどれほどの森林伐採量があったのか、その伐採量を抑制するためにどのようなコントロールを整備したのか、といった具体的な追跡を可能とする。これらの集計・分析を来年度も継続する。また、藩領における建築の管理システムに関しては、既に前年度に盛岡藩、秋田藩の史料収集を進めており、今年度はそれらの成果について学会口頭発表を行なった(「江戸時代における建築物の類焼・修復に備えた森林保全について」、日本建築学会)。この発表は江戸時代において、「備林」と称された建築用材備林が広く存在していた点に着目したものである。ここでは、類型化によって全体的な傾向を抽出することに主眼を置いており、個別のケーススタディに関しては来年度も継続して史料収集を進める。
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Research Products
(3 results)