2009 Fiscal Year Annual Research Report
住宅および地域空間の維持管理システムに関する歴史的研究
Project/Area Number |
07J03188
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 琢巳 Ritsumeikan University, 立命館グローバルイノベーション研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 木造建築のライフサイクル / 建築寿命 / 森林資源保全 / 日本建築史 / 環境保全史 |
Research Abstract |
本研究は伝統的な木造建築のライフサイクルと、その維持管理に関する日本建築史研究である。特に着目しているのは、江戸時代の建築造営・修復にみられる「森林資源の保全」を取り込んだ組織的な環境管理システムの存在である。本年度は、研究課題の最終年度にあたることを踏まえ、これまでに収集した史料群に基づく研究論文の作成・公表を重点的に行った。すなわち、1件の学会口頭発表および3件の審査付き研究論文の作成・提出を行った。そのなかで、以下に学会発表の概要を示す。「家作木願留にみる飛騨国の農家普請における伐木について」(日本建築学会大会)は、江戸幕府直轄領・飛騨国における農家普請に関するものである。飛騨郡代高山陣屋文書に収録された「家作木」に関する史料群から、当時の伐木規制の実態を明らかとした。具体的には、1:農家普請の用材である「家作木」の交付申請に際しては、普請願書とともに建物の部位ごとに詳細な製材過程を書き上げた「木取仕様帳」の提出が求められた。2:高山陣屋では提出された願書・木取仕様帳を「家作木願留」を作成することで情報管理し、領内全域の農家普請における伐木数を掌握した。3:さらに「家作木願留」にみられる追筆・付箋・掛紙などの史料的特徴を分析し、領内の伐木数を抑制するために、個々の工事に対して「減木」「差止」の指示を行っていた。4:用材交付に際しては、「家木渡方請印帳」に村役人の連署・加判が求められた。すなわち伐木・用材交付に村人の同意が必須だった。以上の各点である。本研究発表には、史料を扱う上での方法上の特徴を意識した。それは、紙面上の追筆・付箋・掛紙・加判といった書き込み情報に着目した点である。この方法によって、従来の家作規制研究では実態把握の難しかった、成文化された建築規制の実際的な運用という論点を捉えることができた。
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Research Products
(2 results)