2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ホール系における半導体核スピンの電気的コヒーレント制御に関する研究
Project/Area Number |
07J03230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増渕 覚 The University of Tokyo, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 半導体核スピン / コヒーレント制御 / 量子ホール系 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
GaAsを構成する原子核は核スピン3/2を持ち、磁場中で4準位系を形成する。この4準位間の遷移を選択的に制御することができれば、原理的には2量子ビット操作を実現できる。本年度は、試料に意図的に歪みを加えてエネルギー準位の電気四重極分離を拡大し、準位間の遷移の選択的かつコヒーレントな制御を行った。試料はGaAs/AlGaAsヘテロ接合の2次元電子系をホールバー型に加工したものを用い、表面にポリイミドを塗布することにより歪みを印加する。量子ホール効果ブレークダウンを用いて核スピンを動的に偏極し、抵抗検出型NMRを測定した。ポリイミドを塗布していない試料では1つのピークだったスペクトルが、準位間隔の違いに対応した3つのピークに分離した。分離したスペクトルのそれぞれのピークにおけるRabi振動の観測や、スピンエコー法を用いた核スピンのコヒーレント時間T2の測定を行ったところ、ラビ振動の減衰時間・コヒーレント時間が増大していることが確認された。この結果は、半導体核スピンの制御性が向上したことを意味しており、核スピン量子ビット開発に向けた重要な一歩になった。また一方で、核スピン-電子スピン間超微細相互作用が弱いため、核スピン量子ビットが確立された場合にきわめて長いコヒーレンス時間が期待される新材料グラフェンに着目し、微細加工技術・量子ドット作製技術の確立に取り組み、グラフェンを利用した基本的量子回路が作製可能であることを実験的に示すことに成功した。
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Research Products
(3 results)