2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物ウイルスベクターによる内在性遺伝子の転写抑制系の確立に向けた基盤研究
Project/Area Number |
07J03243
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田垣 駿吾 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ジーンサイレンジング / DNAメチル化 / 植物ウイルスベクター / 転写不活性化誘導 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本研究では、遺伝子導入以外の方法で遺伝子の発現を特異的に改変可能な育種法を開発するため、Cucumber mosaic virus(以下、CMV)に由来するウイルスベクターを用い、標的遺伝子に対して特異的に転写抑制型ジーンサイレンシング(Transcriptional Gene Silencing;TGS)を誘導する系の開発を行っている。植物ではメチル化されたシトシンを除去するタンパク質としてREPRESSOR OF SILENCING 1 (ROS1)が同定されており、研究従事者はこのタンパク質の存在が内在性遺伝子へのTGS誘導を困難にしている一因ではないかと予想している。そこで、今年度は実際にNicotiana benthamianaにおけるROS1ホモログの発現量が研究従事者らの開発したウイルスベクターを介したメチル化誘導系に与える影響を解析した。 まずROS1遺伝子およびNicotiana tabacumにおけるDNA glycosylase/lyase遺伝子NtROS1の配列を基にNbROS1遺伝子の全長cDNA配列を単離した。続いて、【迅速かつ簡便に遺伝子発現を抑制可能なVirus-induced gene silencingの手法】と上述の【植物ウイルスベクターを介した配列特異的なDNAのメチル化誘導系】を組み合わせた新規手法を開発した。この手法ではNbROS1遺伝子のVirus-induced gene silencingを誘導するウイルスとCMV:35Spを同時に供試植物に感染させており、これによって容易にNbROS1遺伝子の発現抑制下および通常発現下における植物ウイルスベクターを介した外来性プロモーターへのメチル化の誘導効率、およびGFP遺伝子の発現抑制の程度を比較可能となる。解析の結果、NbROS1遺伝子の発現抑制下では外来性プロモーターに対するDNAのメチル化がより高頻度で誘導され、GFP遺伝子の発現もより強く抑制されることが示された。以上より、NbROS1遺伝子の発現量と植物ウイルスベクターを介した外来性プロモーターへのメチル化誘導の程度との間には負の相関があり、非メチル化状態のゲノムDNAに対して新規のメチル化を誘導する際にもDNAの脱メチル化機構が拮抗的に作用することを明らかにした。
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