2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03264
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山川 義徳 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会性 / 社会的知性 / 社会的距離 / 頭頂葉 / 頭頂間溝 / 背側経路 / fMRI / 脳機能イメージング |
Research Abstract |
ヒトは、高度で複雑な社会環境へ適応するために、他者との円滑な相互交流を実現し、持続可能で調和のとれた社会や組織を形成する能力である社会的知性と呼ばれるものを発達させてきた。一方、産業界においてもこれまでの工業的なの理解だけでなく社会的な方法の理解に対する要求が強まっている。このようなことを背景に、ヒトが他者をどのように認知しているかという社会的認知の神経基盤を明らかにすると共に、その活用を検討した。 これまでの研究においては、ヒトの社会性というものは、他者の表情や心を理解できるかどうかといった他者の特徴の認知といった観点から検討されることが多かった。一方で、他者を理解する場合には自己との比較の中で、自分と他者との関係から他者を理解することも一般的である。そこで、本研究においては、自己と他者との関係性、中でも社会的距離をヒトがどのような神経基盤によって認知されているのかを脳機能イメージング手法を用いて調べた。 結果として、自己と他者との関係性(社会的距離)を判断している時の脳活動部位が自己と外部の物体との関係性(物理的距離)を判断している時の脳活動部位と近傍の頭頂葉内の頭頂間溝領域に局在していることを明らかにした。このことは、社会的距離判断も物理的距離判断同様に、頭頂葉という空間処理を司る脳領域で処理されていることを意味している。 このように、社会性において、すでにこれまで知られている他者の顔や表情を認知するために紡錘状回や上側頭溝などの腹側経路においての情報処理に加えて、他者との関係性を認知するために頭頂間溝などの背側経路も関与することを新たに発見することができた。これらの知見は、持続可能で調和のとれた社会や組織を形成する基盤としての社会的知性の脳内基盤として考えられ、様々な活用を検討することができるであろう。
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