2007 Fiscal Year Annual Research Report
薬物誘発性QT延長症候群における心室性不整脈の発生メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
07J03279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仁科 拓 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 薬物誘発性QT延長症候群 / Torsade de pointes / 再分極のばらつき / IKrとIKs |
Research Abstract |
「心室再分極過程と自律神経系機能との関連性およびその動物種差」をテーマに実験を行った。実験(1)「麻酔下のイヌにおける自律神経刺激が心室再分極過程に及ぼす影響」IKrは副交感神経が優位なとき特に大きく心室の再分極に関与しているが、IKsは交感神経あるいは副交感神経のどちらが優位な状況下においても心室の再分極過程には大きな影響を及ぼしていないことが明らかとなった。実験(2)「クラウン系ミニブタのIKrとIKsの特徴」IKr,IKsともに心室再分極過程に重要な役割を果たしており、IKsに左心室心尖部で大きな部位差のあることが明らかとなった。以前行ったゲッチンゲン系ミニブタをを用いた同様な実験結果と比較すると、IKsがゲッチンゲン系では再分極にほとんど関与していないのに対して、クラウン系では重要な役割を果たしているという系統差の存在することが明らかとなった。実験(3)「カールソンモデルにおける不整脈発生と貫壁性のばらつきの関連性」不整脈発生の直前および起こっている最中も、貫壁性の大きなばらつきは認められなかった。不整脈の発生率には、ニュージーランド白色種>日本白色種、メス>オスの系統差と性差のあることが明らかとなった。実験(4)「ミニブタ(クラウン系)とラットにおけるIKrとIKsチャネルの発現量における心室内部位差の検討」両動物種で貫壁性の部位差は認められなかったが、心尖部と心底部でIKrとIKsの発現量のバランスに有意な差異が認められた。これらの結果を総合して考えると、IKsの再分極過程への関与の程度には、大きな個体差、系統差、性差、動物種差が存在し、in vivoにおいては貫壁性のばらつきは小さく、むしろ心尖-心底に大きなばらつきがあるものと考えられた。これまでのin vitroにおける知見と異なるこれらの結果は、QT延長症候群における不整脈の発生メカニズムを解明する上で、重要な一翼を担うものである貴重な情報を提供する成果であると考えている。
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