2008 Fiscal Year Annual Research Report
ジュゼッペ・ボッタイの芸術戦略-イタリア・ファシズム下の芸術活動と批評の関連性-
Project/Area Number |
07J03297
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鯖江 秀樹 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イタリア・ファシズム / 美学的政治 / 芸術と修辞 / 文化政策 / 全体主義国家 / 観念論美学 / 複数の近代 / 芸術社会学 |
Research Abstract |
本年度の研究は、ジュゼッペ・ボッタイの芸術に対する思想と実践を考察する上で不可欠な文化的・思想的背景を検証するものであった。なかでも、ファシズム期の建築と観念論哲学という分野に絞って研究を進めた。両者とも、ファシズム文化の統制者(ボッタイ)にとって看過しがたい重要な議論の対象であったが、それらとボッタイとの関連性が指摘される場合、あまりに概略的な理解に基づいて分析される傾向が強かった。このことを考慮して、わたしは全体主義国家という特殊な政治状況下で、建築と哲学という分野において、当時どのような問題が存在し、いかに議論されていたのかを個別に整理し、理解する必要があるのではないかと考えた。この考えにもとづいて、建築批評家として知られるエドアルド・ペルシコと、イタリア観念論哲学の代表者、ジョヴァンニ・ジェンティーレを取り上げ、かれら二人の著作の精読と分析とを行った。これら二つの分野についてのいっそう深い理解を獲得することで、ボッタイの文化政策がいかなる性質をもつのかをはっきりと浮かび上がらせるための準備が整ったといえる。こうした一連の研究は、ボッタイの思想と実践にも密接に関連している。近年の「近代再考」の気運のなかで、多角的で、個々の領域を横断するような研究が求められている。ボッタイは、まさしく多角的で領域横断的な文化の組織者であった。絵画や建築、美学思想や大衆文化など、一見無関係と思われるようなものを、近代国家にとってなくてはなちない文化的要素として連動させ、結び付けていく彼の手腕は、今日的な議論にとってもアクチュアリティをもっているのである。
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Research Products
(2 results)