2009 Fiscal Year Annual Research Report
1,3-ジエン由来アリル銅を用いる多成反応の開発とタミフルの短工程合成への展開
Project/Area Number |
07J03322
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山次 健三 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タミフル / インフルエンザ / 耐性 / 医薬品合成 |
Research Abstract |
インフルエンザの世界的な大流行が危惧されるという緊急性を鑑み、設定した2つの課題のうち、抗インフルエンザ薬タミフルの短工程合成を優先課題として研究を行った。 タミフルはRoche社により製造・販売されている抗インフルエンザ薬である。現行の合成経路では出発原料としてシキミ酸を用いている。シキミ酸は植物である八角の実からの抽出、あるいは遺伝子組み換え大腸菌による発酵によって得られるが、タミフルの全世界的な供給を考えた時、その抽出・精製にかかる時間およびコストが不安材料であった。前年度までに、私は容易に入手可能な1-トリメチルシロキシ-1,3-ブタジエンとジメチルフマレートを出発原料とし、新たに開発した触媒的不斉Diels-Alder反応を鍵反応として用いて、タミフルの触媒的不斉合成法を開発した。 一方で、近年タミフルに耐性を持ったインフルエンザウイルスの拡大が広がっている。そこで本年度において私は、確立したタミフルの合成法を基盤として、タミフル耐性インフルエンザウイルスにも効果のある新規薬剤候補化合物の探索を行った。 具体的には、報告されているタミフル耐性インフルエンザノイラミニダーゼとタミフルの共結晶構造を参考に、タミフルの3-ペンチルエーテル部位を修飾した化合物群を合成、そのノイラミニダーゼ阻害活性を評価した。その結果、タミフル耐性インフルエンザノイラミニダーゼに対してタミフルよりも7倍程度強い阻害活性を持つ化合物を見出すことに成功した。季節性インフルエンザの90%以上がタミフル耐性を獲得しているため、それらウイルスに対しても効果のある抗インフルエンザ薬が強く求められている現在、本成果の意義は大きい。
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Research Products
(3 results)