2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03325
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中川 真弓 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世文学 / 菅原為長 / 願文 |
Research Abstract |
本研究の柱の一つは、日本中世における願文執筆活動を明らかにすることである。本年度も、引き続き菅原為長(1158〜1246)の著作の一つである願文集『菅芥集』に注目した。特に醍醐寺本系統に所収される一首、「播磨国書写山円教寺堂供養願文」を取り上げて考察し、南都文化研究会(題目:「嘉禄二年の講堂供養-中世書写山円教寺における勧進活動について」、2008年5月)および和漢比較文学会例会(題目:「嘉禄二年の講堂供養願文-菅原為長と書写山円教寺」、2008年11月)において口頭発表をおこなった。発表では、願文が使用された供養の日時や願主、その供養の背景などについて考察を試み、当時の陰陽頭、安倍泰忠が願主であったことを明らかにした。また、供養が円教寺僧による講堂修復の勧進に応じたものであったことなどを指摘し、『菅芥集』所収「播磨国書写山円教寺堂供養願文」の書写山円教寺史における位置づけを改めておこなった。さらに、為長を「平家物語」作者であるとする伝承(『臥雲日件録抜尤』文安五年八月十九日条)が書写山周辺から生じた可能性があるとする先学の指摘を踏まえ、為長が性空上人の没年説に関わっていること、円教寺長吏の師であったとされることなど、書写山と為長の関わりについても考察を及ぼした。これは書写山円教寺の歴史上においてもこれまで注目されてこなかったものであり、今後さらに考察を深め、成稿化を目指す。 上記の研究と平行して、願文作品が生み出される背景となった寺院における調査・研究に携わった。その一つとして、天野山金剛寺聖教調査(研究代表:成城大学・後藤昭雄教授)に参加する中で、特に金剛寺所蔵聖教の古写本『明句肝要』に注目し、願文・表白あるいは先行文献との関わりについて考察をおこない、論文化した。
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