2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03354
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永吉 希久子 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 排外意識 / エスニシティ / 多文化主義 / 社会保障 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本人とエスニック・マイノリティの間の感情軋轢に注目し、軋轢が小さくなるような共存モデルを構築することにある。本年度は、国の政策が排外意識に与える影響を目的とし、研究を行った。研究手法としては、World Value Survey、European Social Survey、および最新版のJapan General Social Surveyという大規模な質問紙調査データを用いた計量分析と、おもにヨーロッパを中心とした移民受け入れ諸国の政策の検討、スウェーデンでのフィールド・ワークを組み合わせ、国の社会保障政策・移民政策がエスニシティ間の関係性に与える影響を、複数の次元から検討した。その結果、以下のような知見がえられた。移民政策が与える影響については、ホスト社会が問題としているのは、これまで注目されてきたような"Visible"な移民の受け入れの有無ではなく、マニュアル職に就く移民の受け入れの有無であることが明らかになった。さらに、社会保障政策が与える影響についての知見がえられた。寛容な社会保障政策が排外意識に与える影響は、その性質によって異なり、失業保険などの消極的政策の場合には、排外意識を高める効果があらるのに対し、職業訓練制度などの積極的政策に予算を割いている場合には、排外意識が低下することが指摘された。また、スウェーデンにおけるフィールド・ワークによって、手厚い社会保障政策が結果的に移民の隔離政策として機能しているという可能性が指摘された。上記の知見は、移民問題が雇用と社会保障をめぐる問題としてとらえられていること、そして、今後移民の受け入れを考えるうえで、移民に対しての社会保障のあり方を考えるだけではなく、ホスト社会の側も含めた社会保障のあり方を見直さなければならないことを示唆している。
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