Research Abstract |
当研究の対象種であるジュウイチは東アジア固有のカッコウ科托卵鳥で,日本には夏鳥として渡来し,オオルリ,コルリ,ルリビタキといった小型スズメ目の巣に卵を産み込み,雛を育てさせる.ジュウイチの雛は他に例を見ない特徴があり,それによって宿主を騙している.翼の裏側に羽根が生えずに口内と同じ色の鮮やかな皮膚が裸出しているパッチ状の部分があり,それを給餌にやってきた宿主に誇示することでより多くの餌を得ているのだ.宿主の巣は中が暗いことが多く,同じ色で似たような動きをする実際の嘴と翼のパッチを宿主は区別することができず,巣の中にいる雛の数を実際より多く錯覚させられている可能性がこれまでの研究から示唆されている.それを実証するのが当研究の目的である. これまでの研究から宿主が巣に滞在する時間が提示された翼のパッチに応じて増加しているという予備的な結果が得られており,提示された数刺激に対する反応であることが示唆されていたが,例数が不足しているために証拠としては不十分だった.また,提示されたパッチの数に応じて提示された黄色の皮膚面積も増加するため,厳密には双方の効果が分離できていない.そこで,(1)観察例数を増やし,また,(2)パッチを部分的に黒く着色する実験を実施するため,野外調査を実施した. 野外調査は静岡県駿東郡において5月中旬から8月下旬にかけて行い,45巣の宿主の巣を発見した.そのうち4巣がジュウイチによって托卵されたが,2巣においてはデータ収集が行えなかったため,残りの2巣において観察及び実験を行った. その結果,(1)の観察例数に関してはこれまでのデータに加算し,統計解析に耐えられる例数を確保できたため,解析を行った.その結果,仮説を支持する十分に強い証拠が得られたため,論文としてまとめた.(2)の実験に関しては,例数は不足しているものの予測通りの解析結果が得られた.
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