2008 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類による"数"認識とその適応的意義:親子間相互作用と托卵鳥ジュウイチによる搾取
Project/Area Number |
07J03389
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 啓太 The Institute of Physical and Chemical Research, 生物言語研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鳥類行動学 / 行動生態学 / 托卵寄生 / 親子間信号伝達 / 野外研究 / 哺乳類による捕食 |
Research Abstract |
特別研究員研究計画に則り,2008年5月下旬より8月中旬まで,静岡県駿東郡小山町にて野外調査を行った.ジュウイチはカッコウ科の托卵鳥で,ルリビタキなどの小型烏類に寄生するが,雛は両翼にある口内と同色の皮膚裸出部をディスプレイすることで宿主から給餌を引き出している.この皮膚裸出部と嘴を合わせた三ヵ所の刺激を提示することにより,宿主に対し,巣内の雛数を多く錯覚させているという仮説を野外観察と実験によって証明することを試みた. 具体的な調査内容としては(1)ジュウイチの雛を用いた自然状態での行動観察,(2)ジュウイチの雛を用いた部分染色実験,(3)宿主であるルリビタキの巣を用いた雛数操作実験の三点である.約40巣のルリビタキの巣を発見し,うち2巣がジュウイチによって托卵された. まず,ジュウイチに関し,発見された巣において上述(1),(2)の処理を行う予定だったが,天敵である食肉目哺乳類に捕食されてしまったため,遂行出来なかった.残る(3)のルリビタキにおいても発見した巣のうち適正に実験を行うことができる日齢にまで生存できた巣は5巣程度であったが,捕食,およびルリビタキの親による放棄により,データ収集を遂行できなかった.これらの失敗は天敵となる哺乳類の従来とは異なった活性が原因と考えられる.来年度の野外調査においては適正な申請を行い,捕食者の影響を最小限に抑える努力をするつもりである. これらの結果,執筆中の論文は残念ながら例数を増やすことができず,科学的な検証に耐えられないため,公表には至らなかった.
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Research Products
(3 results)