2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03413
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 英明 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ペロブスカイト型マンガン酸化物 / 超巨大磁気抵抗効果 / 電荷軌道整列 / 強磁性金属 / 不純物効果 / 抵抗スイッチング / 絶縁破壊 / 相分離 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型Mn酸化物では、電荷軌道整列絶縁体と強磁性金属が相競合し、臨界状態を形成するため、外場や不純物に対し巨大な応答が現れる。これまで不純物効果に関連して、電荷軌道整列相におけるMnサイト置換効果が盛んに研究されてきた。わずか数パーセントのCrドープにより、電荷軌道整列の長距離秩序が崩壊し、強磁性金属が誘起されることが知られている。本年度の研究では、これとは対極的な視点から、強磁性金属における不純物効果を詳しく調べた。特に、電荷軌道整列相との境界付近に位置する強磁性金属(La0.7Pr0.3)0.65Ca0.35MnO3において系統的にドーピングを行い、Feドープが著しく強磁性状態を不安定化させることを明らかにした。磁気輸送特性や単結晶エックス線回折の結果より、Feドープした系においては、最低温まで電荷軌道整列(短距離)が発達していることを見出した。これは、前述のCrドープとは好対照な効果であり、不純物の種類を変化させることにより、二重臨界系を双方向に制御できること初めて示す結果となった。 さらに本年度後半では、電場印加による二重臨界状態の制御に関する研究を進めた。FeやCrをドープした系では、強い乱れ効果のため基底状態では電荷軌道整列と強磁性金属が共存した相分離状態(磁気リラクサー)が実現している。これまで、磁場により両者の体積分率を制御できることが知られていたが、本研究では電場による制御を目指した。超伝導量子干渉計に電場パルス印加装置を導入し、約50kV/cmの電場により強磁性金属が永続的に誘起されることを明らかにした。この効果は、ジュール加熱効果とは分離して観測され、電流励起効果により電荷軌道整列が強磁性金属へ転換したと考えられる。さらに印加電圧を調整することにより、磁化と抵抗の大きさをスイッチさせることに成功した。このような系の伝導性と磁性を電気的に制御した研究例はこれまで皆無であり、革新的な電気磁気デバイスやメモリへの応用へつながると期待される。
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