2007 Fiscal Year Annual Research Report
転写伸長因子S-IIによる転写中断解除機構が赤血球分化に果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
07J03538
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 真規子 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | S-II / 転写中断 / Bc1-x / 赤血球分化点 |
Research Abstract |
今年度は、S-IIによる転写中断の解除が赤血球分化時の遺伝子発現に寄与しているかの検討を行った。まずS-II遺伝子欠損マウスにおいて発現量が低下する遺伝子の探索を行い、多数の赤血球特異的な遺伝子の発現量が低下していることを見出した。さらにマウス個体より単離した赤血球前駆細胞をin vitroで赤血球分化誘導すると、分化刺激に応じて誘導される遺伝子の発現が、S-II遺伝子欠損体では低下することが明らかとなった。このうち、赤血球分化に重要な役割を果たす遺伝子であるBcl-xには、S-IIにより解除される転写中断部位が存在することをこれまでに明らかにしている。しかしながら生体内においてもBcl-x遺伝子の転写中断が起こっているかは不明であった。私は、S-II遺伝子欠損マウスの分化赤血球では、転写中断部位の下流まで移行するRNAポリメラーゼIIの量が減少することを明らかにした。一方、転写中断部位の上流ではRNAポリメラーゼIIの存在量は同程度であり、in vivoにおいてもin vitroと同じ転写中断が起こっていることが示唆された。また転写開始部位における開始複合体の形成量は、S-II遺伝子欠損マウスと野生型マウスとで差がなく、転写開始においてはS-IIは不要であることを明らかにした。生体内におけるクロマチン鋳型上の転写では、RNAポリメラーゼIIが転写伸長反応を行うに伴って、ヒストンのアセチル化などの修飾が行われる。私は、S-II遺伝子欠損マウスではBcl-x遺伝子の転写伸長の傷害に伴い、ヒストンアセチル化が低下していることを明らかにした。以上の結果は、転写中断によってヒストンのアセチル化状態が変化し、S-IIがこれを制御することを示唆しており、転写の分野において新規な制御機構が見出されたと考える。
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