2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写伸長因子S-IIによる転写中断解除機構が赤血球分化に果たす役割に関する研究
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07J03538
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 真規子 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | S-II / 転写中断 / Bcl-x / β-globin / ヒストン修飾 / クロマチン / 赤血球分化 |
Research Abstract |
細胞内の転写反応を理解する為には、クロマチン構造を考慮に入れることが必須である。最近S-IIがin vitroでクロマチン鋳型での転写活性化に働くことが報告されたが、細胞内でのS-IIのクロマチンへの作用については報告例がない。昨年度の研究成果より、S-IIによるBcl-x遺伝子の転写中断解除はヒストンのアセチル化を伴うことが見出された。今年度は、転写伸長時においてS-IIがクロマチンにどのような作用を及ぼすかについての解析を行い、転写中断解除とクロマチン修飾との連関について検討した。 転写伸長効率の上昇に必須な過程としてRNAポリメラーゼII(RNAPII)のリン酸化がある。この過程はクロマチン修飾に重要な役割を果たしており、リン酸化されないと、(1)遺伝子上からのヒストン除去(2)ヒストンメチル化(3)ヒストンアセチル化、が低下する。S-II KOでは転写伸長反応の中断が見られ、ヒストンアセチル化が低下するという結果から、S-IIの作用点がRNAPIIリン酸化である可能性が疑われる。そこでS-II KO赤芽球において(1)(2)の過程に異常があるかを検討したが、いずれも正常であり、Bcl-x ORF中のアセチル化度のみがS-II KOで影響を受けることが判った。従ってS-IIはRNAPIIリン酸化とは異なる作用点で、ヒストンアセチル化に選択的に作用すると考えられる。さらにBcl-x以外の遺伝子についても解析を行った。β-globinの遺伝子はS-II KOにおいて発現低下するものの、この遺伝子上に明確な転写中断部位は見出されなかった。この時S-II KOにおけるヒストンアセチル化はプロモーターでもORFでも低下していなかった。従ってヒストンアセチル化の低下は、転写中断部位があるBcl-x遺伝子について特異的に観察されるものであると考えられる。以上の結果を総括して、転写中断とヒストンのアセチル化がS-IIによって協調的に制御されることを提唱する。このような転写中断解除因子の役割はこれまでに知られていない新規なものであり、クロマチン鋳型上で行われる転写反応機構の理解に役立つものと考える。
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Research Products
(3 results)