Research Abstract |
Bauer, et. al. (2005)の研究に基づき,日本の文化的背景を考慮した上で親密な対人関係の観点から,自伝的物語とwell-beingとの関連を検討した。well-beingは,理性的成熟を反映するeudaimonismと,快楽の達成を反映するhedonismの2側面から検討した。大学生43名,看護学校生33名を対象に,人生で最高・最悪・転換期となった出来事の物語と,情動知能(eudaimonism;内山ら,2001)と関係満足度(hedonism;Rucbult, et. al.,1998)を測定した。 出来事に対して複雑に吟味する解釈(統合的主題)が情動知能と関係満足度を高めることが示された。しかし,Bauer, et. al.(2005)で指摘されていた内在的な価値観は明確な結果が示されなかった。あいまいなコミュニケーションという文化的特徴から,自己や他者などについて複雑に捉える統合的主題の方が,関係満足度に重要である可能性が考えられた。 年長者を対象に知見の一般性を確認し, eudaimonismがhedonismの関連についても社会的スキルの観点から検討した。また,出来事をポジティブに解釈する"昇華"や,そのような変化が自己または他者についてなのかについても,well-beingとの関連を検討した。 中高年62名(平均年齢48.56歳,SD=8.49)を対象に調査を実施した。その結果,統合的主題が,自己概念をポジティブに昇華し情動知能を高め,内在的主題が精神的健康を促進していた。情動知能は社会的スキルを通じて親密な関係の満足度を高めており,eudaimonismとhedonismの関連が示された。従来検討されていなかった,これらの関連が実証的に明らかとなり,年長者においても出来事の解釈がwell-beingに影響することが示された。
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