2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代諸方言に見る推量形式の用法変化-〈認識〉から〈伝達〉へ-
Project/Area Number |
07J03699
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白岩 広行 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 推量形式 / 言語変化 / 推量 / 確認要求 / 談話的機能 / 方言 / 若年層 |
Research Abstract |
日本語の推量形式には、「明日はたぶん雨だろう」のように単に話し手の見込みを示す<推量>の用法と、「ほら、あそこにポストがあるだろ」のように聞き手に確認を求める<確認要求>の用法がある。本研究は、これら推量形式について、より基本的な<推量>の用法から<確認要求>の用法が拡張してゆく過程を通時的に記述するものである。 今年度は、昨年度の文献資料調査を継続しつつ、現在の各地の方言に目をむけた調査およびその論文化をおこなった。以下、現在までに明らかになったことをまとめる。 現在の若年層の使う方言の推量形式、たとえば東日本諸方言の「ベ」、中部地方の「ラ、ダラ」、西日本諸方言の「〜ウ(「うまかろう」の「〜ウ」)」などの形式は、概して<推量>で使われることは少なく、方言によっては使用が非文法的・不自然なものとまでされている。一方、<確認要求>の用法では頻繁に使われる。これは、若年層の東京方言(あるいは、共通語的な話しことば)における「ッショ」にも共通する。また、北海道方言の「ベ」「ッショ」は、共通語の「ダロウ」にはない用法まで意味を拡張させている。 昨年度の結果とあわせると、方言を含めた日本語の推量形式の意味は、<推量>を中心にしたものから<確認要求>つまり対人的なコミュニケーションのためのものへと大きく変化しているものといえる。従来の共時的な文法記述とは視点を変え、生きた方言を通時的に調べることで、現在の推量形式の使用のあり方をより鮮明に掴み取ることができたと考える。 なお、同様の傾向は、海外旧植民地の残存日本語でも顕著に見られることがここ1〜2年のあいだに指摘されている。これにあわせ、海外の日本語として、南米日系移民の日本語を対象にした調査も3月におこなった。この調査は継続中だが、やはり同様の傾向が見られるものと思われる。
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Research Products
(1 results)