2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 聡 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 官位 / 受領 / 室町幕府 / 伊勢貞助記 / 四職大夫 |
Research Abstract |
本年度は、まず中世後期の武家における受領官途に関して、特に自分のいる国の受領名を武家が名乗る意義について、従来の研究が一部の限られた事例をもとに述べられていた問題点から、蒐集した全国の事例をもとに検討し、直接的・実質効果は無いが、他氏との政治的関係や、領国支配を円滑・有効に進める上での「名分」としての「効果」はあったとした。さらに武家がなぜこの受領官途を選択して名乗ったかという問題についても、それは所領のある国・縁のある国の受領を名乗る、代々の家の官途である、先祖が任官した官途であるなど、自らのアイデンティティを示す自己表現の一つとして、受領を選択し名乗っていたことについて指摘した。 室町幕府の官位叙任に関する問題についても、従来の研究では指摘されていなかった点を重点的に、尊氏・義詮期、義満〜義教期、義尚期、義植期以降の各時期における特徴的な問題、官位叙任の取次をした官途奉行、そして大名等が官位の叙任を受ける時にいったいどれほどの費用をかけたか、といった問題について検討した。またその中で、官途の自称が全国的に行われるようになったのは、義詮期に成功任官が行われなくなったことが大きく影響したことも言及している。 また『後鑑』所載の「伊勢貞助記」は、戦国期の幕府を考える上での基本史料でありながら、従来その史料的性格や信頼性について言及されておらず、官位叙任に関する記述も含んでいるので、その史料性を検討する必要があった。そして検討の結果、「伊勢貞助記」は現在国立公文書館にある内閣文庫架蔵の伊勢貞助筆とされる四冊の故実書(「雑々聞〓書丁巳歳」・「雑々書札」・「貞助記」・「聞書」)の記述の抜粋であるとし、また著者である伊勢貞助自身の族系、政治的位置・背景についても併せて明らかにした。
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Research Products
(8 results)