2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーションを持つカイラル液晶系の論理的研究
Project/Area Number |
07J03760
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 洋人 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | キラリティ / 欠陥 / 液晶 |
Research Abstract |
本年度の研究では層状秩序と螺旋秩序の競合によって生じる液晶の欠陥構造を,Ginzburg-Landauタイプのモデルで解析した。解析した欠陥構造は,有限の長さの層状部分からなる結晶粒が,粒界面で一定角度だけ振れるツイストグレインバウンダリー(TGB)相と言う構造である。数ある液晶の欠陥相の中でも一軸的な最も単純な構造で,これまで多数の研究が精力的になされてきた。粒界面の構造は,理論によるTGB相の予言以来20年以上の長い年月に渡って螺旋転位列からなる,粒界面内の2次元構造と考えられ,一部の実験でも実証された。 しかし近年,実験によって,粒界面内で層状秩序が一様に溶けている振れ軸方向の1次元構造である,メルテッドグレインバウンダリー(MGB)構造が提唱され,本当はどちらの欠陥構造であるのかが問題になっている。そこで,本研究ではどちらの構造が安定になるのかを明らかにするべく現象論的な自由エネルギーを用いて解析し、TGB構造とMGB構造の両方を解析的に理論的に取り扱うことに成功した。これにより,安定状態は温度を上げるとともに,スメクチック相,TGB構造,MGB構造,コレステリック相と変化することが分かり,相図を求めることができた。TGB構造とMGB構造の安定性境界及び相図を求めた研究は,本研究が初めてである。 スメクチック相とTGB構造は,相図上で隣り合うだけでなく幾何学的にも共通の対称性を持つ。コレステリック相とMGB構造にも同様の関係がある。従って,層状秩序と螺旋秩序の競合により形成される欠陥構造は,対称性を共有し欠陥を含まない他の相の近くで生じる,と結論づけることが出来る。
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Research Products
(2 results)