Research Abstract |
有機汚濁・富栄養化の進行した汽水湖の水環境問題を解決するためには,水域の現状評価や水環境動態の将来予測に関する研究成果に基づいて,水域の保全・改善に向けた適切な流域・水域管理手法を提示する必要がある。そこで,これらの課題に対する基礎的研究として,水理・水質学的な水環境解析手法ならびに非物理モデルを用いた水環境解析・予測手法の可能性・有効性について検討した,前者の手法として生態系-流体力学モデル,後者の手法としてニューラルネットワークモデルにそれぞれ着目し,汽水性富栄養湖の水環境解析・動態予測に適用した、解析の対象水域は,有機汚濁・富栄養化による水環境悪化の問題が顕在化している鳥取県湖山池ならびに東郷池とした. まず,有機汚濁や富栄養化に関わる水環境要素のうち,クロロフィルaならびに溶存酸素に着目し,それらの濃度の推定およびリアルタイム予測にニューラルネットワークモデルを導入した.過去に蓄積された観測データを教師データとして有効に利用することで,クロロフィルa濃度および溶存酸素濃度を良好に推定・予測することができた. つぎに,水域の水環境悪化の原因メカニズムの解明を目的として,低次生態系-3次元流体力学モデルを構築し,湖山池と東郷池の水環境解析にそれぞれ適用した.夏季の代表的な気象条件の下で数値実験を行った結果,両湖ともに,平均風速程度の2〜3m/sの風が作用した場合,最深部付近の底層が貧酸素化することが予想された.一方,5〜6m/s程度の強風が作用した場合,風の強い混合作用によって湖水密度が均一化されるとともに,底層に充分な溶存酸素濃度が保たれることが示唆された,このような違いは,平均風速時で水深2〜3m付近に密度界面が形成されるのに対し,強風時では水塊の強い鉛直混合が生じたことに起因すると考えられた.
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