2008 Fiscal Year Annual Research Report
細菌感染における抵抗性を左右する宿主側レジスタンス・ファクターの網羅的解明
Project/Area Number |
07J03855
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新澤 直明 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細菌 / 感染症 / ショウジョウバエ / 分子遺伝学 |
Research Abstract |
昨年度の研究により、ショウジョウバエを用いた機能獲得型スクリーニング(GSシステム)によりサルモネラ菌感染に伴う抵抗性を制御する宿主側因子を複数同定した。その中からp38マップキナーゼのショウジョウバエ相同遺伝子の一つであるDmp38bは宿主個体に侵入した病原菌を排除するための機構に直接影響せず、病原体が及ぼす病原性を抑制する機能(トレランス機能)により宿主個体に抵抗性を付与している可能性が示唆された。本年度はDmp38bによるトレランス機能の生物学的実体について解明することを目的とした。貪食細胞内で特異的にGFPを発現するプラスミドpMIG1(Valdivia and Falkow,1997)を保持するサルモネラ(以下WT+pMIG1とする)を用いた感染実験により、ショウジョウバエ感染系においてもサルモネラは貪食細胞に感染し、その内部で増殖することを明らかにした。このWT+pMIG1を用いることにより、Dmp38b変異体においては細胞内サルモネラがより少なく、強制発現個体ではより多く観察された。この結果は全身における菌体数と相関する。さらに共焦点顕微鏡を用いた観察により、Dmp38bを強制発現している貪食細胞は肥大化し、細胞内に大量の菌体を含んでいることが明らかになった。これらの知見からDmp38bは貪食細胞内に菌を閉じ込めることにより、細胞外(体液中)に存在するサルモネラの数を抑制することでトレランスを発揮している宿主側因子であることが示唆される。ショウジョウバエ感染モデルを用いて、トレランス機能の宿主個体における生物学的現象として貪食細胞による囲い込みを発見したことは、従来の免疫学的知見には無かったものであり、この感染モデルの新たな可能性を期待させるものである。
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Research Products
(6 results)